第10話 白ウサギ

 病院を後にした蓮と優仁は家への帰路を歩いていた。


 優仁の星霊が現れない以上、かなり危険だ。最近はテネブラエの活動も活発になりつつある。いくらフレンド登録で相手の居場所や危険を察知できても駆け付けるまでに多少の時間はかかる。その間に襲われない保証はないのだ。


 もっとも家が近いため、クリスティーヌのステラフィールドプライベートモードを優仁の家まで広げることができたのは幸いだった。プライベートモードは安全地帯だからだ。


「いいか、優仁。これから星霊戦争が終わるまで、家にいる以外はずっと俺のそばにいろ」


 そばにいて守らなければいけない。星霊から、テネブラエから、そして何よりから。


 その日、蓮はまた夢を見た。今度はティーパーティーの会場ではなく、森の中だった。


「ここは?いつもの場所じゃない?おい、チェシャ!」


 蓮は辺りを見渡した。周囲は高い木々で覆われており、チェシャの姿もなかった。

 すると、一人の少女を見つけた。白い髪、白い肌、紫色の瞳。真っ白なワンピースを着ていた。しかし、人間ではなかった。ウサギのような耳と尻尾を付けていた。


 チェシャの仲間か?蓮は少女をじっと見つめた。少女、白ウサギは走り出した。蓮はとっさに白ウサギの後を追った。


 白ウサギは一本の大樹の前で止まり、蓮を見た。


「お願い、を助けて...」


 そして、白ウサギは大樹の根元にあいた大きな穴に飛び込んだ。

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