第3話 アプリ

 蓮は黙って歩き出した。優仁も黙って蓮について行く。優仁は先ほどの出来事に頭が追いついていなかった。ただ、歩くという行為をするのに精一杯だった。


「優仁、家に寄って行け」


 優仁はただ蓮について行った。蓮の家は地元では有名な地主で代々国会議員を務める一家だった。大きな門を通り、お手伝いさんの出迎えを受け、蓮の部屋に辿り着いた。


「とりあえず座れ」


 二人はテーブルを囲って座った。蓮は鞄からスマホを取り出し、優仁に見せた。


「おまえ、このアプリ、インストールしたのか?」


 スマホの画面には"星に願いを"のアプリが表示されていた。しかし、よく見ると昼間見せてもらったアプリのアイコンとは色が違った。星のイラストが描かれているが、背景が青ではなく紫色だったのだ。


「イ、インストールなんかしてないよ!昼間の話を聞いて、気にはなったけど。というか、一体あれは何なんだよ!」


 優仁は声を荒げた。


「とりあえず、スマホ見せてくれ」


 優仁はスマホを鞄から取り出し、机の上に置いた。ホーム画面をよく見ると、蓮が見せてくれたアプリのアイコンが配置されていた。


「な、なんで?だって僕、インストールなんかしてない」


 優仁がアプリを触ろうとしたとき、蓮が止めた。


「待て。触るな」


 蓮はスマホを触り何か操作をしている。すると、部屋が歪みだし、先ほどの夜空の空間に変わった。優仁は驚いて立ち上がった。


「落ち着け、優仁。俺だって焦ってるんだよ、この状況に」

「落ち着けって言っても。うわあ」


 優仁は驚き尻餅をついた。蓮の隣には例の水色の女性が空中に浮いていた。


「クリスティーヌ。このスマホから星霊の気配は感じるか?」

「...。かすかに感じはするが通常の気配より弱い。しかし、この少年は''ステラフィールド"内に入れた。その上、私も見えている」

「そうなんだよ。そもそも"契約者"でない限り、星霊に狙われたりするはずがない」


 蓮とクリスティーヌと呼ばれた女性は困惑していた。しかし、それ以上に優仁は困惑していた。


「ちょっと待って、待っててば。話がわからない。僕にもわかるように説明してくれよ」

「そうだな。本来なら自分と契約した星霊から説明を受けるが、今回は俺から話そう。これは星霊界の王、"星霊王"を決める戦いなんだ」

 蓮は語り出した。"星霊王"を決める戦い、"星霊戦争"のことを。

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