サプライズ結婚式⑥ 友人スピーチ



「——明日香さん、山下、結婚おめでとう!」


 凛と通る声でタケルの職場の先輩、坂田さんはそう締めくくった。タケルに視線をやると、彼は無邪気な瞳の色を見せた。


 坂田さんはタケルの職場の先輩。二人はとっても仲良しで、夜中だって電話が来ると出かけてしまうんだから……正直妬ける。でも男同士の友情には女はなかなか割り込めないものだなと感じている。

 

 結婚したら坂田さんよりわたしを優先して欲しいな——なんて考えていると、今度は私の友人代表の番だ。


 小学校から高校まで一緒だったマセ子。

 ゲストは白系のドレスは禁忌だというのに、彼女は象牙色のシフォンドレスを着ていた。わざとに違いない思うと笑ってしまった。


「明日香、タケル。ご結婚おめでとうございます」


 珍しい。マセ子が普通の挨拶? ——と思いきや。


「私はね。明日香。あんたが大嫌い!」


 ああ、やっぱりね。


「いつも笑顔でさ。お人好しですぐに騙される。街頭募金に千円入れたり、困っている年寄り助けて試験に遅刻したりしたこともあったわね! 私が失恋すると一緒に号泣なんかしちゃって……もう本当に私は、あんたが、あんたが——」


 タケルは口元を緩めて私の手をぎゅっと握った。私もそれに応える。だってマセ子は私たちの……。


「大好きよ!!」


 静まり返っていた会場は一気に湧いた。マセ子、泣いてるじゃない。もう本当にあんたの方がお馬鹿さんだなんだから。


「あんたが入院した時、タケルに聞いたの。『あんた、明日香と本当に人生歩めるの? いい加減な気持ちなら私が許さない』ってね。そしたらね。タケルなんて言ったと思う? 『僕はマセ子ちゃんより明日香と過ごした時間は短いかもしれないけど、マセ子ちゃんには負けないくらい明日香が好き』だって!」


 え! そんなこと言ったの?


 私はタケルを見る。彼は照れたようにはにかんだ笑みを見せた。


「なによなによ! 私と張り合うなんて百万年早いっつーの! ——タケル。明日香をよろしくね」


 「そして」と彼女は涙いっぱいの瞳で私を見た。


「明日香。これからはタケルと二人で協力してあんたを支えるよ! 私たちは仲の悪い親友なんだからね!」


 普通は「夫婦二人で協力して……」という挨拶になるはずでしょ? それなのに、なんであんたとタケルが協力するのよ。

 私はなんだかおかしくておかしくて涙がこぼれた。


 マセ子。ありがとう。最高の友人スピーチだよ。


 涙が止まらない私の手をタケルはずっと握っていてくれた。



***


 マセ子を貸してくれたアメリッシュさんに感謝!

そして次は「ちぇ。」さんだおー!

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