第12話 二人は気付かない その2

↓前話の続きである。


 風紀委員顧問を前にして、翔とメイの二人は固まっていた。


「(この先生、めっちゃ『ざます』って言いそうなんですけど!?案の定、呼び名が『ざます』先生みたいだし!!口調がやたら丁寧なのも皮肉を言うつもりだからなんだ、きっと!!)」


 それは偏見が過ぎる。(byナレちゃん)


「(右手の指先を眼鏡に当てて、左手にバインダーに挟んで資料構えてるとか……きっと、どこかでお偉いさんの秘書やってたのよ。それでこの学園の理事長とそのお偉いさんとが旧友でこの学園に呼び出されたんだわ!!どうりでお高くとまっているように感じるのね!!)」


 それは想像が過ぎる。(byナレちゃん)


 一つ、言っておこう。

 彼女が『ざます』先生と呼ばれるのは、見た目が原因ではない。

 確かに、彼女の外見は印象的である。

 決して化粧は濃くないものの、眉間に皺が寄っているように見える程の吊り眉毛に吊り目。掛けている眼鏡も吊り眼鏡である。

 だが、それは彼女の生来的な見た目とファッションであり、普段から『ざます』と言うことも理事長とお偉いさんの裏の繋がりで着任なんてことも、一切ないのである。


 現に今、彼女の思考は。


「(まったく、佐竹さん(他クラスのAさん)は……。以前、彼女に

——先生、一回でいいから『ざます』って言ってみて!――

なんて言われたから、付き合ってあげただけなのに……。いつの間にか、全校生徒から『ざます』先生なんて言うあだ名が浸透していたのは、SNSの力なのかしらね……)」


 なんともまぁ、残念な方であった。

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