第10話 扉を開けれれば
彼らはその時、風紀委員会の委員会室まで足を運んでいた。
「委員会室の前まで来たはいいけど、いざ入るとなると緊張するね、メイさん」
「そうね、翔さん。私、中学の時は委員会に入ってなかったから、余計心臓がバクバク言ってるわ」
「中ではきっと、もう既に有意義な話し合いが繰り広げられているんだろうな……。僕がその話について行けるか不安だよ……」
「だ、大丈夫よ。翔さんなら、どんな話にも有益な意見をきっと言えるわ。普段から翔さんの言葉を聞いている私が言うんだもの。間違いないわ」
「そ、そうかな……?」
「そうよ。どちらかと言えば、不安なのは私の方だわ。私って、結構気が利かないところがあるから、迷惑を掛けるかもしれないし……」
「そんなことないよ。メイさんは普段から僕の家の家事を手伝ってくれるし、お弁当だって作ってくれるじゃないか。そんなメイさんが気が利かないなんてことあるもんか。メイさんが大丈夫ってことを僕が保証するよ」
「そ、そう……?」
「そうだよ。メイさんは自信を持っていいし、そんなメイさんが僕のことを褒めてくれてるんだから、僕だって自分に自信を持たないとだよね」
「そうよね。翔さんに言われたら、私もなんだか弱気な自分が恥ずかしくなってきたわ。覚悟はできたわ」
「わかった。じゃあ、行こうか」
「えぇ、いいわよ」
翔は「よしっ!」という掛け声とともに、ドアを勢いよく開ける——
ガシャンッ!!(←鍵がかかってた音)
——はずだったのだが。
「……あれ?」
散々お互いに鼓舞し合い、あれだけ息巻いてドアを開けたというのに。
彼らはドアの横に掛けられている表札を見て気付いた。
「「今日、委員会休みだったんだ……」」
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