第15話 最初に歌う人

 部屋を出た。

 マネージャがいる。

「どうでしたか?」

「今は、眠っています。疲れたみたいです」

 無言。

「あ、いや、すいません。これです」

 見せられた端末の画面。

「彼女の心拍と位置情報です」

「なんでこれを」

「彼女との契約なんです。心拍と位置情報がおかしくなったら、私が助けに来ると」

「弁護士でマネージャで、用心棒ですか」

「ええ。相当額の対価が払われています」

 彼女は、曲がりなりにも売れっ子の歌手。

「でも、個人的にも、限界なんです」

 マネージャ。さびしそうに笑う。

「ひとりの感情のない女の子を、監視し続けるなんて。私にはとても」

 彼女。少しよろめく。

 普段はやらないのに、つい、手を出して、支えてしまった。

「あ、ありがとうございます。やっぱり疲れてるな私」

「う、うそだろ」

 触って、わかって、しまった。

「俺のことが、好き、なんですか?」

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