盗賊ですが、カッコいい英雄になりたいっ! 地球ダンジョン攻略系英雄譚
帝国城摂政
第1話 カッコいい、えーゆうになりたいっ!
【----と言う訳で、あんたには《盗賊》のジョブを与えるかな~】
真っ白で、なにもない空間。
そこに存在するたった1人----濃い緑色の服を羽織っただけの、半裸な屈強の男性が、そう口にする。
寝転がった状態のまま、彼は光る指をこちらに向ける。
光る指から放たれる白い光が、俺の身体へと入ってくる。
身体に光が入り込むと共に、俺の身体のなにかが書き換わるような気配を感じる。
すると、俺の目の前に、俺のステータスが現れる。
==== なながみね すばる =====
10さい
せいべつ;おとこ
ジョブ;とうぞく
HP;180
MP;0
スキル;
盗む
トラップ解除
バックスラッシュ
===== ====== ======
今まで、なにも記載がなかったジョブの欄に、《盗賊》という文字が刻み込まれていた。
【お前に与えられたジョブの名は、《盗賊》。素早き風のごとく健脚と、敵の攻撃の力を弱める力を兼ね備えている、ダンジョンのアタックサポーター。
前衛となりて、一番槍に戦場へと駆け付け、戦場をかき乱す。戦場ではない場では罠を壊して、皆の安全を担う者。
----汝、《盗賊》となりて、ダンジョンに入られよ】
俺に《盗賊》というジョブを与えた神は、俺にダンジョンへ行くように促す。
【神々は、人間に願いを託す。善き者であれ、と願いを託す。10の頃を迎えるとき、ダンジョンに行くための力を与える。
ダンジョンはそんな神々からの試練である。世界各地にあるダンジョンには、人々を楽園へと導く宝を与える。そして"はじまりのダンジョン"の最下層へと辿り着き、己の大望を叶えるが良い。あらゆる望みは、"はじまりのダンジョン"で叶えられる。
さぁ、《盗賊》のジョブを受けし、七ヶ峰スバルよ。その力で----ダンジョンに入り、夢を叶えよ!】
神々しい光を纏って、そう強く命じる神。
俺はそれに対して、神と同じくらい強い口調で言い放つ。
「いやだっ! 俺は、自分でゆめ、叶える!」
【えっ……? なに、言ってんの?】
俺の言葉に、神から神々しい雰囲気が薄れて、目を丸くしてこちらを見ていた。
【いや、けっこー難しい言い回しだったのは分かるよ。だから、自分で考えるだなんて、考えが出ちゃうんだな~。
じゃあ、簡単に言うわな。あんたは10歳になった。だから、ジョブを貰った。これは知ってるやろ?】
「それは……まぁ……」
今日、俺はジョブを貰うため、神に会いに来た。
地球に数十年前にいきなり現れたダンジョン、それは神が人間に与えた試練。つまりはテストって奴らしい。
10歳の年を迎えると、俺達は教会で、ジョブを貰うんだ。
これで頑張って、ダンジョンを攻略してということみたい。
世界各地にあるダンジョンには宝があり、色々とお金になったり、力になる。
で、"はじまりのダンジョン"という場所を見つけ出して、そこのお宝を取れば、あらゆる願いは叶えられる。
それを為すことが、俺達人間が為すべき事、である。
【ダンジョンで強くなって、"はじまりのダンジョン"っちゅう場所の最下層まで行ければ、どんな望みも叶えたるわ。
……どや、分かったか? つーか、こうやってジョブを与えられる前に、大人から聞いてへんの?】
「いや、大人から聞いてるけど……」
【良いか、少年。覚えなあかん事は、ほんのちょっとやで。
あんたは《盗賊》のジョブを与えたんや。で、パーティーとかを組んで、いつか"はじまりのダンジョン"に行くんや。そして、願いを叶えてもらい~な】
「いやだ! 自分でなる!」
【なんでやっ! 叶えてもらえるんやで、嬉しいやろ!】
あり得ないなんて顔で神はこちらを見ているが、それを言うならばこっちの方があり得ない。
「俺は、えーゆうになるんだ! それは自分でなるんだ!」
そう、あの英雄王カッチョーエのように。
一撃で敵を倒して、相手の悩みを瞬時に解決して、皆に慕われる、あの英雄王カッチョーエのように!
「えーゆうは、あきらめないんだ! あの、かっこいいえーゆうに、カッチョーエみたいなえーゆうに、俺はなるんだ!」
【英雄って……しかも、アニメとかのやつ?
と言うか《盗賊》って、ただのアタックするサポーターみたいな奴であって、そんな英雄みたいな強さになれるかと言われると……】
神は、【うーん……】と頭を悩ませる。
【ごめんなぁ、少年。もう、あんたは《盗賊》で決まってるから、《英雄》っていうジョブにはなれんのや。
だからな、もしも英雄になろう思うてるんやったら、やっぱり"はじまりのダンジョン"に叶えてもらい! ほななっ!】
神は消えた。なんだか、申し訳なさそうに消えた。
ジョブをくれた神は、最後に"はじまりのダンジョン"に行って、願いを叶えてもらう際に、英雄にして貰えと言った。
けれども、俺は諦めない。
英雄王カッチョーエみたいに、自分の力で運命ってのを切り拓いて見せるんだ!
「なるんだっ! 俺は、えーゆうに!」
あの日から4年。
俺は未だに英雄に、カッコいい英雄になる事を諦めずにいる。
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