オパーツ!~異世界の工芸品~
向井一将
第1話モアイ像1
「ねえねえ、日向君。知ってるかい?実はイースター島のモアイ像って沈んだムー大陸から歩いてきたらしいんだよ」
「…また花水木先輩の【自称世界の真実】ですか?この前だってクリスタルスカルは異世界の超技術で作られたとか言ってませんでした?」
私立加納学園高等学校、部室棟3階。中央に2つの長テーブルと椅子が何脚か置かれてあるだけの8畳ほどの簡素な部屋。
トキ色に染まる空がうっすらと部室を照らす中、長テーブルを挟み互い違いに座りながら2人の高校生が話していた。窓際の席でパソコンを眺めながらモアイ像について熱心に話す女子高生と、扉の近くの席で本を読みながらその話を聞いている男子高校生。
私立加納学園高等学校、超常現象研究会。
部員は3人
部長の
副部長の
そして幽霊部員の
彼らが所属する超常現象研究会はこの世のありとあらゆる怪異現象、未確認生物、都市伝説、超常現象の真理を探究すると言う目的で作られた―――
―――運動部は大変そう、文化部はめんどくさい、でも帰宅部にもなれない…放課後何となくだらだらと過ごしたいといった、怠惰な性格と青春を求める気持ちがカオスに混じり合った…怠惰な日常にスパイスが欲しいといった高校生が過ごす部活であった。
「その話をした直後、全てのクリスタルスカルは全て近代に作られた偽物って言うニュースが出回ってたじゃないですか、それとモアイ像もまだ謎は多いですけど現地の人が作ったって言う説が有力なんですよ?」
僕は読んでいた月刊ムーを下しながら花水木先輩の方に向きなおる。先輩の大きな目がぱっちりと僕の方を見据えニカっと目を細める、少しだけ開けた窓から入るやわらかな風が先輩の栗色のショートボブの髪の毛をさらりと揺らした。
「あっはは!相変わらずロマンが無いなあ日向君は、そんなんじゃ世の中の真理にたどりつけないよ?」
差し込む西日が赤く先輩の表情を照らす中、先輩の笑う口元がとても印象的で…僕はなんだかムず痒くなって先輩から目を逸らすように下ろした本を上げ、何度も読み直した月刊ムーの文章に目を移した。
○
【働かざる者食うべからず】
聖書にも書かれているこの言葉は、どの国でもどの時代でも…そしてどの世界でも同じであった。
それは紀元前1万2千年、レムリア大陸。それは後にムー大陸と呼ばれる大地であっても…
「おおー兄ちゃんやるなー、野良仕事初心者とは思えないぜー」
「はっはは!当たり前だ!俺様は天才だからな!たとえ農作業と言えど俺様の才能は留まる事を知らないぜ!!!」
何所までも続く青く広い空、さんさんと照りつける太陽、そして一面の耕された農地。そこで爽やかな汗を流しながら農作業に励む二人の男がいた。
首に巻いたタオルで汗を拭きながら鍬を地面に振り下ろす、良く日に焼けた男性と、同じく農作業に精を出しながら夢中になって次々に農地を耕し続ける、豪快な笑い声が印象的な男性―――
―――ただし、その瞳は燃え盛る炎ように赤く紅く煌いており、頭頂部には黒いのヤギの様な禍々しい角が生えていた。
「はっはは!俺様はコツを掴んだぞ!鍬を扱うときは体全体を使うんだ!刃の重さを使いながら引くようにな!土を削る感覚で耕すんだ!」
「兄ちゃんすげえなー本当に初めて野良仕事やったとは思えねーよー前職の魔王?って言うのよりこっちの方が性にあってるんじゃねーかー?」
のんびりとした口調でそう話す男性は一休みと言った様子で腰にぶら下がってる水筒の水を飲みながら魔王と呼ぶ男に声をかけた。
「はっはは!もしかしたらそうかもな!なんたって魔王の頃は毎日毎日勇者に命を狙われて…ってなんで魔王の俺様がこんなことしてるだああああああ!!!」
魔王ベルゼ・ウィークはそう空に向かって叫ぶと手に持っていた鍬を全力で地面に投げ捨てた。
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