派遣テイマー~調査は村を追放されてから~

ふぁぶれ

その牙は運命を噛み砕く

俺の眼には星と炎、そして血が映りこんでいた。耳には喧騒と悲鳴、そして慟哭が響き、鼻には草と鉄、獣の臭いが流れ込む。全身の魔力を漲らせ、限界まで集中して調伏テイムの魔法を撃ってもその魔獣は揺るがない。その間にも獣は人々を襲い続け、本能のままに暴れ続けている。少なくとも、任務までに研鑽を重ねた俺にとっては想像し得ない光景であった。杖を握りしめる掌に汗が染み出る。


「馬鹿な…ありえない、こんな…!」


「ダグラス!」


「来るな、フーリ!」


少女が青ざめた自分を心配してか駆け寄ってくる。しかしそれを狙い済ましたかのように、魔獣は闇夜を駆けて飛びかかった。

最早自分の魔法は通用しない。ならば身を呈してでも人々を守るしかない。魔術師の矜持もかなぐり捨てて、鬨の声を挙げながら杖を振りかぶる俺。


何故こんなことになってしまったのか。牙と杖とが交錯するその刹那、俺はこの村に訪れた時の事を現実逃避のように思い返していた。

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