第5話 そして誰もいなくなった
これは、私がスーパーの花売り場で働いていた時のお話。普段はあまり売れない花売り場だが、お盆は稼ぎ時だ。
売り場には1人で立つ。まだ、働き始めて2か月くらいの頃こと。お盆のシフトで私は午後売り場に1人で立って対応していた。お盆の最中ということで、お客さんはひっきりなしで訪れ、お供えのお花を買っていく。スーパーの近くにお寺があるので買うだけでなく、花束を短く切ったり、何個かの花束をまとめたり、ということもサービスでやる。一応、パートのリーダみたいな女性がいて(Bさんとする)、Bさんが人が並ぶと来て手伝ってくれるので、何とか、レジ打ちや花の処理をやることができた。
その日は、夜6時までのシフトだったのだが、まず、Bさんが4時頃「私、今日あがるから」と帰っていった「え~1人」と不安に襲われたが、まだ、課長が残っている何かあったら課長に聞けばいいと思って、何とかやっていたが、4時半頃課長が「じゃあ、おれ、帰るから」と私を花売り場に残して帰ってしまった。
花売り場にぽつんと1人。あり得ない。もし、わからないことがあったらどうしよう、と泣きそうになったが、無慈悲にもお客様はやってくる。
1人なので、なかなか早くできず、客がずらりと並んだ。私は頭が真っ白になってしまった。パニックしてレジを打つ手が止まる。並んだ客はざわざわし始め「この人テンパってるよ」という声も聞こえる。
どうする、私。誰にも助けを求めれない。どうしたらいいんだ。バックには誰もいない。1人なのだ。その時、1人のお客さんから「深呼吸したら」と一声。これぞ天の声、大きく深呼吸した。そうしたら、気持ちが落ち着いて、それから、レジも打てるようになり、何とか業務をおえることができた。
ただ、である。レジミスを出してしまった。レジのお金が、実際の会計より、多かったのである。つまり、どこかでお客さまからお金をもらいすぎたということである
あんな状況で、ミスくらいして当然だとは思ったけれど、そうも言えない。Bさんに責め立てられて結局、始末書を書くはめとなった。
あの時、あの売り場で、私を救ってくれたのは、どこのどなたかわからないお客様だった。まさに「お客様は神様です」だ。
読んでいただき、ありがとうございました。
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