フェイジョア

 高熱にうなされるたびに、足を踏み入れることのできる楽園があった。どこまで分け入っても終わりのない、滴るような緑。澄み渡った、清浄な泉。赤く美しい木の実が香り、頭上には決して曇ることのない青空が広がっている。

 楽園には、いつ行っても変わらない姿で迎えてくれる少年と、私のように何度もここを訪れているらしい人たちが数人いた。そして、訪れるたび、前には私と同じように訪れるだけだった人たちが、少年と同じように、そこに住み着くようになっていた。

「久しぶりだね」と、少年は言った。数年前、最後に会ったときのことだ。

「そろそろ君も、ここに住んだらどうだい。ここは決して変わらない、平穏な場所だよ。戻ったって苦しいだけだろう」

 他の人たちも、口々に誘ってくれた。彼らは私に赤い実を差し出し、食べるように勧めた。ぼんやりと受け取って、口にしようとしたときに、誰かにぐいと体を引っ張られた。赤い実は地に落ちた。振り向くと、誰かが遠くから私を呼んでいる。その声に引かれるようにして、私の意識も楽園から遠ざかっていった。暗く歪んだ少年たちの表情も、すぐに見えなくなって、私は生き返った。

 あの日、生死の境を彷徨った日から、もう楽園には呼ばれない。あのとき、あの実を食べていたら、と思うと、恐ろしい気がする。

 けれども。永遠に変わらないあの楽園で過ごした美しい時間を思い出すと、今でも胸が高鳴る。あの実の甘さを想像すると、ひどく惜しいことをしたような、そんな気がしてくるのである。

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