ナツツバキ
夏の間、あの人はいつも、白い服を着ていた。一度、私が、涼しげで好きだと言ったからだ。
細身のあの人に、白はとてもよく似合った。白のシャツ、白のワンピース、白の浴衣、白のパーカー、白のジーンズ、白のスカート、毎日どこかに白を身につけたあの人は、強い日差しの下で、いつも花に水をやっていた。あの人が透明なジョウロから撒く水はきらめき、繁る葉の上に美しい玉をいくつも作った。私は、その静けさの中で息をするのが好きだった。
夏の花が白く咲き誇るのを見ると、私はあの光景を思い出す。目に鮮やかな白と、耳に爽やかな笑い声と、胸のうちに溜まったままどこにも吐き出せないかなしみと。
私はもう、白い服を着られない。白はあの人の色だ。もう、これからずっと、あの人のためだけの。
黒い服しか並んでいないクローゼットを閉めて、今日も日陰を選んで歩く。
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