オオデマリ

 また会おう、という約束を果たせないまま、こんな遠いところまで来てしまった。ここは明るくて広くて、そしてとても静かだ。ときおり密やかな囁きと笑い声が交わされるが、それだけだ。言葉がなくとも、みんな満ち足りているのだ。

 けれど、君と笑い合った日々が恋しい。あんなに楽しくはしゃぎあえる友なんて、ここにはいない。ここの人たちはもちろん善人で、そしてこのぼくの心も満ち足りているのだけれど、……けれど。

 白くて明るくて、そして永遠に変わらないこの天上の国で、待っているよ、なんて言うのはいけないことだろうか。君なら、縁起でもない、と笑うんだろうか。

 いつでも良い、いや、できる限り遅くで良い。ぼくはここで、いつまででも待っている。

 だから、君の都合の良い時に、また会おう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る