スノーフレーク

 この町には、雪解けのころに行われる祭りがある。他の町ではこんな時期に祭りをしているなんて聞いたことがないので、きっと北の地方ならではなんだろう。

 気温がプラスになる日が数日続くようになると、雪が溶けて、長いこと隠されていた路面が見えてくる。そこから不意に姿を表すのが、雪の妖精だ。雪の中に隠れて、その冷たさの中で憩っていた彼らは、小さな身体を透き通る翅のはばたきで支えて浮かび、手近な雪の中に戻ろうとする。それを、みんなで歌いながら追い立てるのだ。

 春が来た、春が来た。ここはもう春です。

 雪はあちらに、山の方に。あそこはまだ冬です。

 昔から伝わるそんな歌を口ずさみ、溶け残っている雪の塊を山の方へ軽く投げる。どんどん出てくる妖精たちは、戸惑った様子で山へ向かう。空中に放り投げられる雪の欠片と、妖精の翅の輝きとが、春を喜ぶ人々の歌声にきらめく。

 妖精たちの姿がほとんどなくなったころ、祭りも終わる。歌って、雪を投げて、ひとしきり温まった身体で、人々は笑顔を交わす。

 この祭りが終われば、もう、春はすぐそこである。

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