ローダンセ

 そんな悲しそうな顔をするなよ。お前は昔から、なんでもすぐに顔に出るんだよなあ。気持ちを隠すってことができないから、先生によく怒られて、おれの後ろで泣いてたっけ。そうそう、好きな女の子の前で顔が赤くなるの、今も治ってないのか? ははは、冗談だよ。だから、笑えよ。

 なあ。別に、おれはお前のことを恨んじゃいないんだぜ。こんな小さなガラスケースの中に浮かんで、白衣のお前を見上げるのも、そんなに悪いことじゃなかったと思ってるんだ。いや、それどころか感謝してるんだよ、何遍も言うが、これは本当だ。だって、ばかなのはおれの方なんだから。道路に飛び出したネコを庇うなんて、なんでそんなことをしたのか、あれから何年も経った今でも、よく分からないんだよ。

 ネコの代わりにバラバラになったおれを、おれの核を、生かしてくれたのがお前だ。きれいに元通りとはいかなかったが、おれがおれとして今日まで生き延びられたのは、本当にお前のおかげなんだ。

 だから、そんな悲しそうな顔をするなよ。もともと失っていたはずの命なんだ。おれを生かすための費用が、もう尽きかけているんだろう。本当に隠し事ができないやつだよ、お前は。そんなお前だから、おれはこんな姿になっても、友情を感じられたんだな。

 今まで本当にありがとう。さあ、お前の手で、そのスイッチを切ってくれ。なに、安心しろ。おれの、お前への気持ちは、そんなことで変わらない。おれたちはずっと変わらず、友達だ。

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