八重咲きストック
『その美しさを永遠に保ちたくはありませんか』
という謳い文句に誘われて、自らの美しさをどうにかして保ちたいと考えていた女は、その店へ足を運んだ。店内は薄暗く、見事な熊の皮や、小動物、植物の剥製などが壁に飾られていた。
痩せた店主にじろじろと眺められながら、女は尋ねた。
「私の美しさを永遠に保ちたいのだけど」
「貴女の?」
店主は目を丸くした。女は自信を傷つけられて、多少腹立たしげに頷いた。
「そうよ。だって私、美しいでしょう?」
「え、ええ……まあ、それはそうですが……。本当に良いので?」
「だって、そういうお店でしょう、ここは」
「まあ、そうですけれども……」
店主は戸惑ったように視線をさ迷わせたが、女の態度に押し切られた形で頷いた。女はなぜ店主が仕事を渋るのか分からなかったが、提示された額を気前よく払い、手術の日取りを決めた。
手術当日、渡された液体を飲んで手術台に横たわった女は「飲む麻酔薬なんて変わってるわね」と思いながら息を引き取った。彼女が最後に聴いたのは、心底不思議そうな店主の声だった。
「剥製になりたいだなんて、変わったお人だ」
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