シャコバサボテン

 ホウセキノハネは、非常に稀な特性を持った小鳥だ。雄も雌も生まれた時から真っ黒な羽と身体を持ち、多くの鳥の中で全く目立たない。鳴き声も他のよく似た鳥とそっくりなので、鳥類の専門家でなければ他の種との区別をするのも難しい程だ。しかし、その特性が明らかになってからというもの、所謂ブームというものが起きて、多くの人間がこぞって彼らを手に入れたがるようになった。

 その特性とは、死の間際、羽と身体が宝石のように美しく変化するというものだ。

 以前は別の鳥と混同されていたのが、明らかになった特性を冠した名前を与えられ、ペットショップにずらりと並べられた。その売り場の近くに必ず置いてある専用餌には、ホウセキノハネだけに効果のある毒が混ぜ込まれている。皆、真っ黒な小鳥になど興味は無いのだ。購入して専用餌を与え続ければ、早ければ一週間ほど、遅くても一ヶ月以内に、それはそれは美しい、宝石のような羽を観察することができる。

 インスタ映えするとか、子どもの自由研究に良いとか、生命の神秘を感じるとか、好き勝手な言葉が交わされるブームの中で、ひょんなことから私の手元にも、一羽の黒い小鳥が舞い込んできた。

 室内を好奇心に溢れた眼差しで飛び回る小鳥に、どうして死を早める毒など与えられようか。

 そういう訳で、動物愛護法のもと一過性のブームが終息して一年が経つ今でも、小鳥は楽しげに私の部屋を飛び回っている。

 身体も羽も、面白みのまるで無い、黒一色のまま。

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