ラバテラ

 この世のものとも思えぬ美しさで多くの人間を惹きつけたその姫は、五人の貴公子に無理難題を突きつけた。要求された物を探しに行って命を落とした者、そもそも探しもせず偽物を作らせた者、偽物を摑まされた者、色々いたが、結局は誰も姫の要求を叶えることは出来なかった。

 貴公子達が全て退いた明くる日、ひとりの若者が姫の前に現れた。姫は彼にも、五人の貴公子に突きつけたのと同等の、難しい要求をした。若者は涼しい顔で言い放った。

「その願いを叶えるためには、姫様のお力が必要です。共にいらしていただきたい」

 老夫婦は引き止めたが、姫はそれを承諾した。そうして、二度と竹取翁の家へ帰らなかった。


「わたくしの要求など意に介さず、わたくしを連れて行こうとするほどの愛情が欲しかったのです」

 若者の隣で月を見上げながら、姫は呟く。若者は全て心得ているという風に彼女の肩を抱き、頷く。この若者ならば、もうすぐ来る月の使者たちも上手に退かせてしまえるに違いない、と姫は思った。

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