ケイトウ
ヒユさんは変わっている。
まず、髪の毛が真っ赤だ。私たち、まだ小学生なのに、あんな色の髪にしている子なんて見たことない。物凄く短く切り揃えていて、男の子みたいだし。真冬に短いスカートで、タイツも履かずに底の浅いスニーカーで登校してきたことがあるし、真夏の今でも、真っ黒なセーターとモコモコのブーツを履いて現れたりする。笑いのツボも変わってて、みんなが真面目なことをしている時に笑い転げていることがある。
そんなだから、ヒユさんには友達と言えそうな子がいない。登校してから放課後になるまで、ヒユさんが仲の良い子と一緒に何かしているのを、見たことがない。
それなのに、彼女はちっともそれを気にしていないようなのだ。私だったら、教室で、いや学校で常に一人なんて耐えられない。寂しいと言うよりも、居心地が悪い。私には話をできる友達がいるんだ、ということを他の子に見せるために、友達と話しているような気さえする。それなのにヒユさんは、いつも一人でいて、そして幸せそうなのだ。
そんなヒユさんに声を掛けられたから、本当に驚いた。「大丈夫?」と聞かれたのだ、ということを理解するのに時間がかかってしまったくらい。
「大丈夫って……何が?」
硬い声が出てしまった。
「私は大丈夫だよ、全然大丈夫」
あなたとは違うんだから。私は変わってなんかいないんだから。
ヒユさんは、困ったように笑った。それが意外にも大人びていて、私はますます、私が硬くなっていくのを感じた。ヒユさんの笑みは、まるで先生みたいだ。困った子だな、と言うような。人の中まで見透かしたような。
ヒユさんは、「それなら良いんだけど」と言って、自分の席に戻って行った。そして、何やら本を広げて一心に読みだした。
そうだ、私はあなたとは違う。
私は一人でいることに耐えられない。
早くも目から溢れそうになる涙を必死でこらえて、私はじっと黒板を見つめた。長すぎる休み時間が、早く終わってくれますようにと願いながら。
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