ヒマワリ
黄色、黄色、中央に茶色、下葉は緑、そして黄色、黄色。
背丈より高い、大きな黄色い花々が寡黙に立ち並ぶ中、私はあてどなく走っていた。何度かつまずいて転びそうになるが、どうにかこらえて先へ急ぐ。
どうしてこんなに走っているのか、分からなかった。この決まり切った色の世界のどこに出口があるのだか、皆目見当がつかなかった。しかし私はここから出なくてはいけない。とにかく一心に、そう思った。
どれだけの時間をこうして走っているのかも分からない。靴は擦り切れて砂が入り、衣服には汗が染み込んで重い。疲れ切った手足はぐにゃぐにゃするのに、それでも立ち止まることは出来ない。こんなに走っているのだから、そろそろ夜が来てもおかしくなかった。そうなってくれれば、少なくとも、この目眩を起こすような明るい色からは逃げられるはずだ。
喘ぎながら、空を確認した。抜けるような青空には雲ひとつない。そして、太陽も無かった。
途端に全てを得心して、私はとうとう立ち止まった。腹の底から笑いがこみ上げてきた。黄色い花が、どんな走り方をしても変わらない角度で続いている理由が分かった。彼らは私に顔を向け続けていたのだ。
私がいる限り、夜は来ない。そして、私には永遠に、夜は訪れない。
私は走り続けるほか無い。
ひとしきり笑い終えて、その笑いを納めて、私はまたゆっくりと、走り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます