ヒマワリ

 黄色、黄色、中央に茶色、下葉は緑、そして黄色、黄色。

 背丈より高い、大きな黄色い花々が寡黙に立ち並ぶ中、私はあてどなく走っていた。何度かつまずいて転びそうになるが、どうにかこらえて先へ急ぐ。

 どうしてこんなに走っているのか、分からなかった。この決まり切った色の世界のどこに出口があるのだか、皆目見当がつかなかった。しかし私はここから出なくてはいけない。とにかく一心に、そう思った。

 どれだけの時間をこうして走っているのかも分からない。靴は擦り切れて砂が入り、衣服には汗が染み込んで重い。疲れ切った手足はぐにゃぐにゃするのに、それでも立ち止まることは出来ない。こんなに走っているのだから、そろそろ夜が来てもおかしくなかった。そうなってくれれば、少なくとも、この目眩を起こすような明るい色からは逃げられるはずだ。

 喘ぎながら、空を確認した。抜けるような青空には雲ひとつない。そして、太陽も無かった。

 途端に全てを得心して、私はとうとう立ち止まった。腹の底から笑いがこみ上げてきた。黄色い花が、どんな走り方をしても変わらない角度で続いている理由が分かった。彼らは私に顔を向け続けていたのだ。

 私がいる限り、夜は来ない。そして、私には永遠に、夜は訪れない。

 私は走り続けるほか無い。

 ひとしきり笑い終えて、その笑いを納めて、私はまたゆっくりと、走り始めた。

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