4.カップ麺

 お腹が空いて目が覚めた。カーテンの隙間からお店のライトが見える。空は薄暗い。キッチンに向かい一人用の小さな冷蔵庫を開ける。僅かな調味料といつ買ったかわからない古びた人参が目に入る。水道の下にある戸を開けてカップ麺を適当に取り出した。ヤカンに水を入れ火にかける。お湯を注いでいると玄関に白い紙を見つける。紙を拾いながら部屋に戻る。テーブルにカップ麺を置き、半分に折られた紙を広げる。

 西東京市本町ビル 地下駐車場 二十三時

 紙を片手に地図を広げる。西東京市本町ビル。ここから歩いて三十分ほどの距離だろう。ちょうど三分が経ちカップ麺ができた。蓋をめくるとラーメンの匂いが熱々の湯気と共に運ばれる。箸を手に取り麺を口に運ぶ。麺が咀嚼され喉を通り胃に入るのを感じた。身体を少し倒し目の前に転がるペットボトルを取る。いくばかり放置されていたぬるいボトル。蓋を開けるとじんわりと炭酸の抜ける音が室内に響いた。

 わすが五分もしないうちに空っぽになったカップが目の前にある。ベットを背もたれにしてよりかかる。

「〜〜だ。」

 その声はクラクションに掻き消された。両手を天井に向ける。その手は空で何かを掴む。そして両手は顔を覆った。

 カップ麺の残り汁を流し、箸と一緒にゴミ袋に捨てる。そのまま脱衣所で服を脱いでシャワーを浴びる。横に線が入った腹筋に沿ってお湯が流れる。シルエットは細くお世辞にもガタイがいいとは言えない。しかしながらほのかについた筋肉がその姿をより妖艶なものにする。

 シャワーを浴び身体を拭く。脱衣所に置いてあるきれいに畳まれたパンツを穿いて洗面台の前に立つ。ドライヤーを取り出し髪を乾かす。髪を乾かしながらビルまでの行き方を頭に浮かべる。リビングに戻り服を着る。黒い薄手のロングティシャツに黒いスキニー、黒い靴下を履いた。斜めがけのサコッシュを開け中に赤いケースがあるのを確認する。さっきまで見ていたマップを中にしまう。スポーツブランドのナイロンパーカーを羽織り、サコッシュを背中にさげた。ランニングシューズを履いて玄関を開ける。少し肌寒い風が吹き、ファスナーを上まであげる。

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