『落ちこぼれ』の称号を頂いた魔術師の風潮破壊授業
世も末コウセン
第1話エリート校を卒業してもその後の人生が安泰だとは限らない
「はぁ、面倒だ。なんで俺がこんな事をしなければならないんだ!」
俺、ピグロ(27)は職を探している真っ最中だ。
今は生活費獲得のために、街でチラシを配るアルバイトをしている。この国最大の魔術学園と名高い、ゲニー魔術学園のチラシだ。
まぁ、どんなことが書かれているのかは詳しくは知らないのだが。
雪が降りしきる中、俺は震えながらチラシを配る。
(何が、名高い魔術学校だ!何が、平等な社会だ!)
俺は愚痴をこぼしながら営業スマイルでチラシを配る。
若い女子3人組を見かけたので、声をかけてみる事にした。
「どうですか?大魔道軍隊への進出率98%のゲニー魔術学園をご検討されてませんか?」
「結構ですー」とサラリと逃げられた。
(俺は何をしているのだろう。俺だってこの魔術学園の卒業生だ!まぁ、半分ぐらい行っていなかったけど……。でも、一応卒業しているのだから、もう少し優遇しても良くないか?でも、俺はこんなところで母校のチラシ配りをしている)
そんな事を思いながら俺はチラシ配りを続ける。
(ちょっと休憩でもするか?)
そう思って行きつけのコンビニで、抹茶ラテを買って数十秒で飲み干した。
(もうなくなったのかよ!)
コップをゴミ箱に捨てて、コンビニを後にする。
ふと、路地に目を向けると成金だろうか?高級そうなアクセサリーを身に纏い、自信満々に歩いている小太りの男を見かけた。
(おいおい、そんなアクセサリーを身につけて路地なんか入ったら)
案の定、その男は盗賊集団に囲まれていた。
(バカだなー。どうする?助けるか?)
俺はこのような人生に関わりそうな選択の前には少し考え事をする癖がある。
(よし、あの成金野郎に恩を売れば良い職にたどり着けるかもしれない!)
そんな期待をのせて俺は路地に入り込んだ。
「何をしているんだ!」
俺は男に殴りかかっている盗賊に声をかける。
「なんだよ?見ればわかるだろう?こんな高価なものを見に纏いやがって成金が!どうせこいつも、あの名門魔術学園の出身なんだろうさ!」
そう、これがこの世界が不平等であると言う決定的証拠である。魔術を使える者は重宝され、それ以外の人間は切り捨てられ社会の目にも止まらない。この世界に一矢報いてやりたいと思う考えは俺もこの盗賊集団も同じのようだ。
「た……助けてくれ」
小太りの男は震えながら、俺の目を見てくる。
「俺たちを見逃すってんならお前を痛めつけたりはしない。数の暴力は圧倒的な力を持ってしても勝てないものだ」
と、盗賊団のボスが俺に言いながらシッシッと手の甲を振ってくる。
俺はポケットから小さい本を取り出す。
この本は俺を初心に戻してくれる大事な本だ。
『
俺は盗賊どもに照準を合わせ魔術を放つ。
「ナッ!痛っくない?」
盗賊団は首を傾げる。
「なんだよ、クソ雑魚じゃないっか……」
盗賊団の顔がみるみる青ざめる。
「いかがかな?俺の腹痛魔法『
そう、これが僕の生まれながらに持っている固有魔法『
「きょ……今日のところは勘弁してやる!覚えとけ!」
と、悪役の定番のセリフを残して、彼らは去っていった。
「ありがとうなー。おかげで助かったぞ。君、職はあるのかい?」
俺の望んでいる展開が待っていた。
(よし、ここでないと言えばまともな職に)
俺はそう思いながら首を振ってこう言った。
「あいにく、今はこれといった定まった職はありません。いわゆるフリーターと言う奴でして」
と言いながら俺は小太りの男をチラリチラリと見る。
すると、男は俺にこう言った。
「君の魔術はとても面白い。あれは、人を傷つけないためにわざと腹痛の効果しかない魔術を放ったんだろう?」
(違うんだが。俺はあの魔術しか即座に出せないのだ)
とは答えられるわけもなく俺は
「そうなんですよ」
と答えるしかなかった。
「ふむふむ、気に入ったぞ!君、我がゲニー魔術学園で教師を勤めてみないかい?」
「はい?え?」
俺は幸運の女神の恩恵でも受けているのだろうか?有名企業とはいかなくても中小企業を紹介してもらえることを期待したが。
それ以上だった。
(もし、あの学園で教師を務められると言うことは俺の今後の人生は輝かしいものになる!)
「是非お願いします!」
俺は地面に膝をついて男の手を取った。
「よし、決まりだな。早速で悪いんじゃが、君には新学年のあるクラスの担任となって欲しいのだが……良いかな?」
「はぁ、別に構わないですけど」
「ありがとう。我が校は生徒の質は良いが教師の質が年々下がっているんだ。軍に進出する生徒が多い事が原因ではないかと思うのだがね」
「大変ですね。俺なんかで良ければ」
「いやー助かることこの上ない。早速、我が校に案内しよう」
そう言って男は俺を学園に連れて行った。
ここから俺の安泰の生活が待っている。
そう胸一杯に、期待を含ませて、俺は学園へ向かうのであった。
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