私たちは忙しい
青山えむ
第1話 コスモス
私は
「隣のクラスは夏休みの宿題が多いので同じですよ」
担任はそう言っていたけれど、夏休みの宿題なんて全クラス同じに決まっている。
担任の
毎日毎日プリントと問題集と一人勉強。何ページ分あるんだろ。家に帰ったらすぐ宿題をやらないといけない。テレビも見れないなんて。高学年は大変だな。
おかげでゲームの時間が減ってしまった。五年生になったからちょっと難しいゲームも出来るようになったのに。
今私たちの間で
「
「もう少しなんだよね」
そう言ってごまかす。いや、本当にもう少しなんだよね。こんな風に友達と(ゲームの)レベルを合わせる
それにゲームは遊ぶ時間が限られている! 時間を破ったらゲーム機を取り上げられるから守っているよ。お母さんとの約束。お母さんのことは大好きだからね。お父さんも好きだけれど……ちょっと下品だなって思う瞬間が多いかな。おならとか。
いつも一緒に帰っている
「つけまつ毛じゃないの?」
お母さんに聞いたらそう言っていた。のりみたいな物でまつ毛の
今日も礼香とお
「美南は何色のコスモスが好き?」
「うーん、黄色かな。明るい感じが好き」
「黄色のコスモスの花言葉は
野生の、ってとこが気になったけれども多分
「礼香は何色が好きなの?」
「私はやっぱり白かな」
「白のコスモスの花言葉は?」
「
礼香はちょっと得意げに言っていた。
「どういう意味?」
「多分
礼香は自信たっぷりに言っていた。多分、ってついているけれど。礼香は可愛いもんなー。きっと将来綺麗になるんだろうな。じゃあ礼香にぴったりじゃないか。私のことも明るいって言ってくれるし、なんだかコスモスって素敵な花じゃない?
「ハッピー!」
テンションが上がって叫んでしまった。ぎりぎり
「びっくりした。美南はいつもいきなりそう言うよね」
礼香が目を丸くしていた。だってハッピーなんだもん。
「
「今日はお客さんいるかな」
通学路にある床屋はガラス張りで中が見える。お客さんがいない時、店主のおじさんはテレビを見ていたり私たちの下校を見守ったりしている。変な人がいたり困ったことがあった時、この床屋へ助けを求めればいいんだって。子どもSOSシールが貼ってあるお店。
今日はお客さんがいないのかな、おじさんが外に出ている。学校帰りの小学生が声をかける。私と礼香も声をかける。
「さようなら」
「はいさようなら、気をつけて帰るんだよ」
おじさんはいつも笑顔でそう言ってくれる。
床屋にお客さんがいておじさんに会えない時は中を覗く。それが私たちの日課。
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