第2話 俺の不健全な悩み

 相変わらず雨が続く梅雨の平日。俺と舞は相合い傘で登校していた。


「ずっと雨なのはたりいなあ」


 ぽつりと漏らす。


「私は嬉しいよ?」


 予想外の舞の返し。


「なんでだ?外でデートも出来ないだろ」


 こないだも屋台デートが中止になったし。


「こうやって、一緒の傘で登校できるから」


 やっぱり淡々と、でも、楽しそうにそんな事を言う。


「それなら良かったけど」


「うん」


 そんな事を話しながら、登校した。


 登校後、最近の舞との関係を考えて、窓際で物思いにふけっていた。


(あいつだって、本当はちゃんと告白して欲しいはずだよな)


 こうやって、ずるずると恋人でもない、でも、恋人以上の関係を続けている俺はとんだクソ野郎だ。


「おっす、大介だいすけ。そんな黄昏れてどうした?」


 声をかけた来たのは、向井良二むかいりょうじ。どちらかというと内気な俺にも気さくに話しかけてくれる良い奴だ。


「ああ、ちょっと考え事をな」


 答えつつ、次の言葉を考える。


「ひょっとして、後輩ちゃんのことか?」


 何も言っていないのに、見抜かれたことに動揺してしまう。


「なんで、わかったんだ?」


 一言も言っていないはずなのに。


「そりゃお前、いっつも後輩ちゃんと仲良く登校してるし。お昼はお手製弁当だし」


「ああ。言われてみればそうか」


 確かに、そんな俺が悩み事をしていれば、検討も付くのだろう。


「で、後輩ちゃんと喧嘩けんかでもしたのか?相談に乗るぞ」


 言い方は軽いが、真摯しんしに言ってくれているのがわかる。


「自分でも情けない話なんだけどな。聞いてくれるか?」


 そうして、まいとの昔から今までの関係。肉体関係を持っているのに、未だにお付き合いもせずにずるずると関係を続けていること。そして、そんななのに告白しようと思わないのは、俺が単に身体目当てなのではないかと悩んでいること。


「とまあ、そういう感じ。情けないだろ?」


 言ってて、とんだクソ野郎だと思う。


「うーん。お前らの関係はわからんけどさ。身体目当てってことはないだろ」


 断言されてしまった。


「そうかな」


「そうだって。いっつも仲良く登校してるし、後輩ちゃんも楽しそうじゃねえか」


「そりゃ、気が楽なのはそうだけど」


 それだって、惰性だと言われればそれまでだ。


「大体、身体目当ての奴は身体目当てかどうか、悩まないって」


「そういうもんか?」


 いまいちピンと来ない。


「別クラに女子をとっかえひっかえしてる奴いるが、それはあっさりしたもんだぞ」


「さすがに、とっかえひっかえは引くな。相手の子が可哀想だろ」


「ほら。そう言えている時点で、身体目当てじゃないだろ?」


「言われてみれば、そうだな」


 舞より豊満な肉体を持った女子は1年にも2年にもいるが、別にだからそういう相手とエッチしたいとは思わない。


「難しく考えすぎなんだって。でもま、無理に告白しなくてもいいんじゃね?」


 良二の口から出たのは意外な言葉だった。


「いや、でも、付き合ってないのに、そういう事するのは不健全だろ」


 正直な気持が口をついて出る。


「後輩ちゃんも幸せそうだしさ。お前らがいいなら、それでいいんじゃね?」


 そうばっさりと言い切ってくれる。


「そうだな。もうちょっと考えてみるよ」


「ああ、そうしとけ」


 そうして、良二は去っていった。しかし、「お前らがいいなら」か。一度、舞と話し合ってみてもいいのかもしれない。

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