甘えてくる後輩と俺の不健全な関係

久野真一

第1話 俺と後輩の不健全な関係

「雨だね……デート、楽しみにしてたのに」


 梅雨つゆのある日。俺の部屋で、まいが何度目かのため息をつく。トレードマークのツインテールがどこかへにょっとしている気がした。窓の外を見ると、雨露が窓を伝って落ちていく。


「仕方ないだろ。雨天中止だし。機嫌直せよ」


 不機嫌そうな舞をなだめる俺。今日は、晴れていたら屋台フェアで食べ歩きデートのはずだった。


「それじゃ、ギュっとして?」


 上目遣いでベッドに座る俺を見上げてくる。こういう仕草は反則なんだよなあ。要望に答えて、後ろから舞の小柄な身体全体を抱き締める。抱きしめた手からぬくもりやら柔らかい胸の感触が伝わってくる。


「ありがと……♪」


 現金なもので、あっさり機嫌は治ったらしい。しばらく、お互いの温もりを感じながらじっとする。


 ふと、舞の胸を優しく揉みしだいてみる。


「ん。はぁ」


 艶めかしい声を上げる。


「ひょっとして、したくなった?」


 舞が淡々とした声で聞いてくる。


「ああ。だめか?」


 胸から下に手を這わせながら、聞いてみる。


「いいけど。もうエッチなこと、始めてる……」


 言われてみるとそうなので言い返せない。


「いやだったら、止めるけど」


「いやじゃない。そのまま、して欲しい」


 どこか甘ったるい声。その言葉を合図に、舞をベッドに押し倒して、キスをする。最初は唇に。次は首に、その次は肩に。


「はぁ、ん。やぁ」


 喘ぎ声を上げる舞。そのまま、舞の服を脱がせていく-


「先輩、もうすっかり慣れたね」


 一糸まとわぬ状態で、そんな事を言う舞。これからされる事を心待ちにしているのか、嬉しそうだ。


「そりゃ、何回もしてればな」


 そう言って、もう一度口づけを交わして、再度の行為に没頭する。


◇◆◇◆


「ん。凄く、気持ちよかった♪」


 相変わらず、口調は淡々としているけど、どこか嬉しそうだった。


「そっか。おまえ、感じやすいよな」


 正直、そんなに俺が上手だとは思えないのだけど、満足はしてくれているらしい。


「ううん。先輩が上手なだけ。別に感じやすくない」


 恥ずかしげに目を逸らす舞。いつからか、舞は俺のことを「先輩」と呼ぶようになっていた。


「いや、感じやすいだろ」


「感じやすくない」


 あくまで意地を張る舞。


「じゃ、もう一度試すか?」


「うん。試してみて?」


 やっぱり嬉しそうな舞。積極的に求めることこそ無いものの、求められるのが嬉しいらしい。


「じゃあ……」


 そして、もう一度行為を始める。


◇◆◇◆


「ちょっと疲れた……」


 今日、3度目の行為を終えて、だらりとベッドにうつ伏せになる。


「お疲れ様♪気持ちよかったよ」


 恥ずかしそうにしながらも、満ち足りた表情を向けてくる舞。


 こんな風にして、キスだけじゃなくて、エッチをするのが普通になってから、もう1か月は経つだろうか。


 俺は、山岸大介やまぎしだいすけ石原いしわら高校に通う2年生だ。顔はそこそこ、勉強はまあまあ、運動は少し苦手だと思っているが、何か特技があるわけでもない平凡な男子高校生だ。


 彼女の名前は結月舞ゆづきまい。俺たちの通う石原いしわら高校の1年後輩で、ご近所さんだったせいか、昔から俺に懐いてきてくれた。


 そしてそれは、思春期になっても変わらなかった。女性らしく身体が丸みを帯びていくにつれて、いつしか俺も舞を異性として意識するようになって、いつしか男女としてお付き合いしたいと思うようになった。


 そう思うようになったある日、舞が「キス、してみたい」と言い出したのだ。


「そういうのは好きな人とするものだぞ」


 そう諭してみたのだが、答えは


「先輩の事、好きだから」


 の一言だった。そのまま、求められるままにキスをして、そしてエッチもするようになって、今に至る。そして、未だに俺は彼女に告白していない。


 けじめを付けてちゃんと付き合いたいと思うのだが、こうして2人で居る時は居心地がよくて、つい、ずるずると告白を先延ばしにしてしまう。良くないとわかっていながら。

  

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