第1話 私
「キーンコーンカーンコーン」
チャイムが鳴り響き、私の号令とともに授業が終わった。
「佐倉さん。これ運ぶの手伝ってもらってもいいかな。」
「わかりました。職員室でいいですか。」
「そうそう、よろしくね。」と一言。
これが最近のルーティンとなってしまっている。正直言ってめんどくさい。でも、学級委員に推薦された以上断れないのが私である。
と、まぁこれは建前でしかない。本当は誰かに嫌われる勇気がないだけなのかもしれないと最近思う。
なんだかんだで、色々考えてると職員室に着いて、先生の机の上にノートを置いた。
「ふー。」と一息吐いて、教室に戻る。席に着こうとすると、私の友達が私の席を陣取り、高笑いをしながら話していた。
「あー、澪が戻って来た。お疲れ。」と、
いつも労いの言葉をかけてくれる子たちだ。
周りが私を、「委員長。」と呼ぶ中で今みたいに名前で呼んでくれる。
「こんな素敵な友達がいるから考えすぎなのかもしれない。」とよく思う。
「おーい、おーい。ぼーっとしてたけど大丈夫?何か先生に言われた?」
「いや何も言われてないよ。ただ、考え事してただけだから。」
「そっか。ならいいんだけどね。」
「澪ってば、いつもサバサバしてるのにたまに抜けてるんだよなぁ。この可愛い奴だなぁ。」
こんな風に私をからかってくるのは、1人しかいない。
「楓ってよくもまぁそんなこと私に言えるね。可愛いからかけ離れてるのにさ。」
「いやーそれほどでもなくもないけどね。」
白波楓。彼女は、高校入って最初の席が隣りだったから自然と話すようになっていった。
いつも周りを笑わせてくれて、そんな彼女の姿が私は友達として大好きである。
「それって結局どっちのこと?」
「うーん…」
「楓、悩みすぎよ。」と和やかに言ったのは、いつも穏やかな、潮見恵理香。
恵理香は、白くて大きな目で、小柄でとても華奢な子だが、意外と頑固な子で私の幼なじみだ。
一見、バラバラに見える私たちだけど、いつも一緒に過ごしている。多分、互いにないものを持っているからなのかな…
「あっもう休み時間終わっちゃう。」
「早すぎー、そういえば次、移動教室だったよね。」
「恵里香ってばもう少し早く言ってよー」
「澪も分かってたのに、言わなかったから同罪ですね。」
「嘘⁉︎バレてた?」
「だって澪、時計何回も確認してましたし。」
「でも、絶対に時間厳守の澪が時間にルーズなんて、らしくないねー。」
「楓は1番準備遅いんだから、早くしてくださいね。それにしても、澪。体調でも悪い?」
「楓も言ってたけど、何か澪らしくないです。」
「そうかな…。でも、何でもないし大丈夫だよ。心配かけちゃってごめんね。」
「澪がそう言うなら、深入りはしないけど、何かあったら絶対に言わないと駄目ですよ。」
「うん。ありがと」
「私を忘れては困るな。」
「楓もありがと」
すると、予鈴のチャイムが廊下に鳴り響いた。
「急ごう!」
と言って、2人は走り出した。
けれど、私の足は重く、前へは進まなかった。
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