俺が好きなのは妹であって女嫌いなお前ではない

石田夏目

第1話俺が好きなのは妹であって女嫌いなお前ではない。

「京花今日も可愛いな。」


「自分の兄ですがほんと気持ち悪いですね。

さっさと死んでください。」


まるでウジ虫でも見るかのような蔑んだ京花の目に俺は満面の笑みを浮かべた。

俺は世で言うところのシスコン。

いや、シスコンどころの話ではない。

俺は京花を一人の女性として愛している!

のだがこれが悲しいことに俺と京花は実の

兄弟だ。

よくある血が繋がっていない禁断の恋的な

話ではない。

それは親に確かめるまでもなく両親をみればわかることだ。

俺達の母はミスコン優勝経験もあるほどの

美女で家は超がつくほどの金持ち。

噂ではファンクラブまであったらしく

その清楚な見た目と小鳥がさえずるような

ような声から聖女様なんて呼び名まであったらしい。

そして京花はそんな母親にそっくりのまぎれもない美女だ。

腰まである美しい絹のような黒髪、

目元にある泣き黒子

涼しげでキリッとした目

そして身長160センチもあるモデル並みのスタイル。

おまけに生徒会長で頭までいいのだから

もう非の打ち所がない。

しかしそんな母や京花とは対照的なのが

俺と親父だ。

そう俺と父は100人みれば100人が

親子ですねと思わず吹き出してしまうほどの瓜二つ。

実際母と歩いていても二度見されることが

多く不審者扱いされたこともあったほどだ。

しかしそれも無理はない。

なにせ俺は身長163センチの低身長。

顔はいまいちパッとしないし

テストの順位はしたから数えた方が早い

何をやっても今一つ。

自慢できることと言えば視力と

京花への想いの強さぐらいなものだ。

しかし母はそんな父になぜか今でも

惚れていて結婚するときも自分の両親を

三年間も説得し続けたらしい。

まぁ母方のばあちゃんじいちゃんにしてみれば大切な可愛い一人娘を金持ちでもないただの平リーマンである父にとられるなんて思ってもみなかっただろうな。

なんて思いを馳せていると母は不思議そうな顔をして俺を覗きこんできた。


「春斗大丈夫?」


「え!?あぁ、うん大丈夫。さっさとこれ

食って学校行くわ。」


そして食卓に並べられた

白いつやつやとしたご飯と焼き鮭

ワカメと玉ねぎの味噌汁

大根とキュウリの漬け物と

いつものことながら豪華な朝食に

思わず腹がぐーと鳴った。

そう母は料理も上手い。

おそらく朝からここまで丁寧に作ってくれる

母親はそうそういないだろう。

なんとも幸せなことだ。

感謝しつつも椅子に座りいただきますと手を合わせると父と京花は何も言わずただもくもくと食べすすめていた。


「御馳走様。」


そして京花が食べ終わり手を合わせ

立ち上がると俺は食べていたご飯を口にかきこみ急いで後をおった。


「おい、待てよ!一緒に学校行くって

約束しただろう?」


「そんな約束した覚えないですけど。

あとソーシャルディスタンス保って

いただけますか?」


「冷たいなぁー

まっそんなとこも好きだけどな!」


「シンプルに気持ち悪いです。」


そうやっていつものように二人で歩いていると前からある男が駆け足でこちらへ向かってくるのが見えた。

まぁ予想せずともおそらくあいつは…


「おーす!春斗おはよ!」


「あーやっぱお前か。」


そうこいつは俺の唯一の友人小岩井淳だ。

淳はその名前の通りとりあえず暑苦しい。

いつも距離感がバグっていてとにかく声がでかいが悪いやつではなかった。

例えて言うなら学校に一人はいるであろう

熱血体育教師。

そんな感じだ。


「ん?あぁ、京花ちゃんも一緒だったのか!おはよう!」


「お…はようございます。」


ただ挨拶を交わしただけなのだが

なぜか京花の様子がおかしいことに気づいた。

耳元は赤くいつもみたいなハッキリとした

口調ではなくボソボソとまるで何をいってるのかわからない。

もしかしてこれは…

いやまさかな!

あの京花に限ってそんなこと…

そう理由をつけて自分を納得させつつ

ハハハと笑って京花を見ると

京花は今にも顔から湯気が出そうなほど

顔を真っ赤にさせそして失礼しますと

ものすごい勢いで走り去ってしまった。

その予想以上の行動に俺は開いた口が

塞がらなかった。

え!?だってあのパーフェクト美女で

俺の愛する京花が淳に恋!?

まさかすぎる。というか淳がいいなら

絶対俺でもいいじゃん!

嫌なんでダメなわけ?なぁ!


そんな一人芝居をしている俺に

淳はポンポンと肩をたたくと

おい、何で京花ちゃんは走り去っていったんだ?と言いまるでわからないといった表情を浮かべた。


「いや、お前のせいだろ!」


「…俺が悪いのか?もしかして何か

したか?」


「なにかって…してねぇけど!

したんだよ!」


「訳がわからないな。」


腕を組みうーんと考え込んでいる

淳にだんだんとイライラしてきてつい

「だっから!京花はお前のことが

好きなんだよ!」と叫んでいた。


そしてしまったと急いで口を塞いだが

時すでに遅し。

淳は目を丸くしていて驚いたようすだったが

次第にいつもの表情に戻りそして

俺の方へと向き直った。



「そうか。そうだったのか。

それは嬉しいが少し困るな。

だって俺は…」


「女には興味ないからな!」



「え、いや…は?」






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