つかれたときに見る夢
春嵐
束の間の異世界
「はは。ばかみたい」
見慣れた、しかし初めて見る光景。草原。どこまでも青い空。白い雲。
透き通るような、心地よさ。
世界を包み込む、魔力。
「異世界転生じゃん」
これは夢。
それが、分かる。身体の感覚も。匂いも。すべてが世界を感じる。それでも、自分を現実に繋ぎ止めてしまう硬さが首筋に残っていた。
「首が」
首が動かない。昨日、寝違えてるから。そのまま無理してあお向けに寝ているので、体は動くけど首が動かない。
「それにしても」
綺麗な世界。
こんな世界のなかに、みんな生きているのか。すごいな。アニメって凄い。
仕事がたいへんで、なかなかアニメを見れてなかった。一区切りついてなんとか繁忙期を脱し、思いっきり寝た。そしたら首を寝違えた。しかたがないので寝違えたまま録り貯めてた異世界転生アニメを一気見し、そのままあお向けになってまた寝た。
そして今。
異世界転生アニメよろしくアニメの世界の夢を見てるけど、首が動かない。
「起きたくないなあ」
起きたらまた仕事か。繁忙期ではないけど、もうちょっと休んでいたい。
そして、この草原と空。いつまでも眺めていたいけど、ずっとここにいたいとも思わない。
たまに疲れたときに見るからこそ、アニメは面白い。地味な自分は働き蟻タイプだから、アニメばかり見たり、ずっと寝ていたりする生活が肌に合わない。なんか、こう、そわそわしてくる。動きたくなってくる。
「そうね。あなたはそんな人」
「おっ」
アニメの登場キャラ。名前は忘れたけど、占い師だったような。
「だからがんばって。わたしたちもがんばるから」
「がんばるって」
古風だなあ。今どき頑張るなんて誰も言わないのに。能力主義で、若者が老人をこき使う世の中なのに。
「ねえ」
問いかけた。
そこで、目が覚めた。
「終わっちゃった」
彼氏ができるのか訊くつもりだったのに。
首。治っている。
「治癒の魔法でもかけてもらったのかな」
治癒の魔法。
「誰にだよ」
自分で自分に突っ込んだ。
むなしい。
部屋には自分ひとりだけ。
「よし」
なんかよく分からないけど、いい夢を見た気がする。覚えてないけど。
「今日もせっせと働きますかあ」
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