第41話
【茉莉】
鍊から假屋崎さんの正体を教えてもらったものの、この子が私のお父さん?
いやいやいや、どう見ても普通のJCだし。年下だし。
言動も男の子っぽいけど、子どもみたいだし。
ムリ!
もっとこう、ダンディーな中にも優しげな雰囲気とか、笑顔が爽やかとか、お父さんにはそういうのを期待してたのになー。
「みんなのことは一通り教えてもらったから、この後みんなにプレゼントを作ってあげるね」
プレゼント?
を作る?
何だろう、嫌な予感しかしないわ。
その後、假屋崎さんの姿のお父さんはアンドロイドの時子を見て、懐かしそうに話しかけた。
「時子、久しぶり!」
「秀康さま、お久しぶりです」
そうか、この二人は知り合い、というか、時子はこの子に作られたのよね。
「秀康さまぁ?お前、どうしたの?何、自我が芽生えちゃってるじゃん」
「そんなことはございません。時子は何も変わっておりません!」
「うーっそだぁ、じゃあ君は一体誰なのかな?」
「私は時子・ジ・アンドロイドです」
「うーん、ま、いいや。その内分かるでしょ」
「...」
どういうこと?
今の時子は作られた時と違う人格なの?
というかアンドロイドに人格なんかないわよね?
確かにアンドロイドにしては個性がありすぎるとは思ってたのよね。
というわけで、更に1ヶ月訓練が続き、私のジャグリングはディアボロ、デビルスティック、ポイ、シガーボックス、クラブと、異種の道具に発展し、それぞれプロ並み以上の技ができるようになっていた。
おかしいな、自転車でオリンピックゴールドメダリストを目指すはずだったのに。
そこに静の姿をしたお父さんがやってきて、
「例のプレゼント、できたよん」
と、ガラスでできた日本刀のようなものを渡された。
お!
結構重い。
「これはハイパーダイヤモンドで作った剣だよ。普通のダイヤモンドの3倍の硬度を持っているから、これで斬れないものは宇宙にないだす!」
え?何それ?
ハイパーダイヤモンドって、これ買ったら幾らすんのよ?
斬鉄剣よりスゴいんじゃない?
「昔カーボンナノチューブを作った時に、ついでに精製しておいたんだヨ。茉莉が今まで訓練したジャグリングの技の速さでこの剣を使えば、小型の限定核並みの破壊力になると思うなー。技の名前はアトミック茉莉でヨロシク!」
いやいやー、変な技の名前付けないでー...
【瑞希】
あれからも患者さんに会うため、病院に通っていた。
ソマチットに愛情を与えることで殖えると夢で聞かされ、末期がん患者の娘さんから愛情を教えてもらい、色々な患者さんの患部に愛情を投入していたつもりだった。
心なしか患者さんたちの顔色が明るくなってきている気がしていたけど、本当に元気になっているのか確証は持てなかった。
そんなある日、例の末期がんのお母さんのところに行くと、ベッドにいない。
まさか亡くなったのかと愕然としていると、車椅子に乗せられてお母さんが帰って来た。
MRIなどの検査をしてきたという。
以前はほとんど意識がなかったお母さんは、今ではほとんど起きていて、食欲も出てきたそうで、腫瘍マーカーの数値も下がって来ているという。
「藤堂さん、本当にありがとうございました。あなたに看てもらってから、どんどん良くなって行くのが分かるんです」
娘さんから感謝された。
よかった。人からまともに感謝されたのは生まれて初めてかもしれない。
ソマチット、殖えてくれたんだ、きっと。
この調子で病院中の患者さんを治してしまおう!
と思ったのも束の間、病院から「もう来ないでいただきたい」との通達があった。
なぜ?
よく考えてみれば、患者にとっては治してもらうことはありがたいことだけど、病院にとっては患者を減らしてしまうことになる。
病院の経営を考えればそういう答えになるのか。
複雑な気持ちになった。
あのお母さんの元気な姿を見たかったなぁ。
多分そろそろ訓練が終わる。
アメリカから帰ってきたら、真っ先にお母さんに会いに行こう。
【果歩】
「ねえねえ果歩ちゃん、君にもプレゼント作ってきたヨ」
皆で朝食を食べていると、静(の姿の父)が傍らで何か持っている。
見た感じは金属でできたペンダントのように見える。
「それは何?」
「これは常温核融合炉で使っていた部品で、思念波を増幅する作用を持っている物質だよ。たまたまそういう性質だったんだけど、果歩ちゃんの能力が上がると思うんだよね」
思念波?
「他人の脳の活動は常に微弱な思念波として外に出ていて、果歩ちゃんはその思念波を捉えることができてると思うんだ。それから、思念波を逆に人に送ることによって考えを伝えたり、五感で捉えた情報も送れるようになると思うよ」
何だか難しい話だけど、要は私を介して他人の思いや感覚を皆で共有できるってこと?
「それって、例えば武蔵の眼で見た映像を兄弟皆に配信できるってこと?」
「うお、果歩ちゃん飲み込み早ーい!ただ、流石にあまり遠くに離れちゃうと繋がれないと思うけどね」
これは確かに便利かもしれないわね。
いちいち話をしなくても、皆が一人で行動しているのと同じ連携ができるってことでしょ?
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