A3用紙

真町しんちょう駅から徒歩1分。


古い雑居ざっきょビルの2階奥にはなたんてい事務じむしょがある。


3畳と決して広くはないが、ミニキッチンもあり小さいがテーブルとソファも置いた。



いつ依頼が来ても良いように事務所で待機たいきしているが、誰もこない。


初めのうちなんてこんなもんさーー



なんて思い1週間がった。



探偵なんて不要なくらい平和な街なのだろうか。


今日も事務所の窓から商店街しょうてんがいを見ていた。


商店街には八百屋、100円ショップ、小さな電気屋、耳鼻科に調剤薬局、歯医者、本屋、銭湯と充実している。


この事務所の窓からは八百屋がよく見え、

緑ヘアーのおばさんが朝から大根をうりまくっていた。



商店街は沢山の人が行き来しているのに、

この事務所には誰もこない。


場所はいいはずなのだが...やはり名の知れない探偵事務所だからか...。


そうだ。



キュッキュッキュキュキュッーー



A3用紙1枚に1文字ずつ



鼻 津 探 偵 事 務 所



と書き窓に貼っていく。


これでここに探偵事務所があるのはわかってもらえるだろう。







コンコンコンコンッ!!




早速来た!



ガシャッ



ドアが開きそこに立っていたのは、片手に大根を持った緑ヘアーの八百屋のおばさんだった。


なんだろう...そう思った矢先。


「ちょっと。私、オーナーだけど窓に貼ってるあれ、剥がして。勝手にあんなの貼ったらダメ。剥がして」




「.........はい....剥がします.....すみませんでした...」



商店街の八百屋にいた緑ヘアーのおばさんが、このビルのオーナーだとこの時初めて知った。



窓に貼ってある紙を剥がし始めると緑ヘアーのおばさんは出ていったようで、後ろからドアが閉まる音が聞こえた。






貼って5分もしないうちに剥がすこととなろうとは。





紙を剥がし終えテーブルに置こうと振り返ると、テーブルに大根が置いてあった。






依頼者来ないし今日はおでんにしようかな。







ぶぇっくじょいぇい

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