1ページ殺人

12人目

今日も退屈な1日が始まった。

おいどんは借りた本を返す為、朝一で図書館に来ていた。

図書館は開いており、司書（しさしょ）教諭（きょうゆ）の美原（みはら）先生が本の整理（せいり）をしている。

「おはようございます。早いんですね。」

おいどんは挨拶（あいさつ）をし借りていた本を渡（わた）す。

「朝から利用される先生が多いんですの」

美原先生は柔らかい物腰（ものごし）でそう答えた。

「滑（すべ）ります？」「じゃあ滑ろうかな...」

滑るとはーー

この図書館は3階（かい）建（だて）で階段の他（ほか）に滑り台がついる。

各階へ滑り台で降りることができ、本を探す際に滑り台を利用し移動（いどう）することから【本を探す=滑る】という意味で使う。

この滑り台が人気（にんき）で図書館を利用する者も多い。

「滑る際はお知らせください」

そんなやり取りをしていると上から凄（すご）い勢（いきお）いで女子生徒が滑ってきた。

ドサッ

スピードが出ておりそのまま宙を舞い床に転（ころ）がった。

「上村（かみむら）さん大丈夫（だいじょうぶ）？！」「えへ、本は大丈夫です」「本はいいの、怪我（けが）してない？」

転がってきた女子生徒は本をの心配（しんぱい）をしていた。

怪我はないようで、本の貸出手続きを終え出ていった。

おいどんは3階に移動し借りる本を探すことにした。

新刊のコーナーに【鼻づまり探偵（たんてい）〜鼻よ取れてしまえ〜】という変なタイトルの本をみつけた。

よし。これにしよう。

本を決め2階、1階へと滑り台で降りる。

「滑りましたー」「はあい、向かいますわ」

奥から美原先生が現れ貸出（かしだし）手続（てつづ）きをしてくれた。

「また滑りにいらしてくださいね」「はい、また滑りに来ます」

図書館を出て売店に向かう途中の中庭で人だかりができていた。

「花壇（かだん）でシュークリーム食べてた人が倒（たお）れたんだって」

倒れた意味がわからず売店へ向かうためその場を後にした。

夕方ネットニュースを見ていたら、今朝のことが書かれていた。

本日、和歌使（わがし）高校にて上村（かみむら）花恋（かれん）さん(17歳)が倒れているのを教員が発見し救急（きゅうきゅう）に通報（つうほう）、既（すで）に心肺（しんぱい）停止（ていし）状態（じょうたい）で病院に搬送（はんそう）されるも死亡が確認された。

死因は苺（いちご）が喉（のど）に詰（つ）まったことによる窒息死（ちっそくし）とみられーーー。

あ、滑り台で転がってきた生徒だ。

苺が詰まるって丸ごと飲み込んだんだろうか...。