蛇の神様に生贄を差し出すことで成り立っている村の、とある若い新婚夫婦のお話。
いろいろしんどいお話です。全体を通じて重苦しいというかやるせないというか、そこかしこに形のない悪意のようなものが漂っているような感覚。いや誰も悪くないっちゃ悪くないんですけど、でも見ようによっては全員が全員それなりにふんわり嫌というか、もう「いやわかるけどさあ、でもさあ」みたいなところが少なからずあったりもして(ミツだけはそうでもないかも)、つまりどこにも肩入れしようのないなんだか宙ぶらりんの居心地の悪さを感じつつ読み進めた先、容赦なく襲い来るただただ強い結末。「いや嘘でしょちょっと」と「まあうっすらそんな気はしてたけど!」の中間のような、あるいはそのどちらも微妙にニュアンスが違うような、ただただ情操をガチャガチャに引っ掻き回されたかのような感覚。
やられました。なにがどう、と言われると非常に言葉に困るのですが、でもなんだか心を焼け野原にされたかのようなこの読後感。謎の納得感みたいなものまであったりして、とにかくエネルギーの濃度の高いお話でした。いや本当になにがどういう形で刺さっているんだろう……膝に来る一発をもらったのは間違いないのですが、でも見えないところからのパンチだったのでなにも言えないというか、ただ「すごいよ! 読めばわかる!」くらいのことしか言えないのが情けないです。
なんというか、いろいろ理不尽というか本当にどうにもならない感じの展開なのですが、でも現実って往々にしてこんな感じだったりするのがまた切ないです。ついついあれこれと理由を探してしまいたくなる、無常感溢れる作品でした。