武蔵野ところどころ

美木間

武蔵野・おもかげ・文学散歩

 気分転換に、紙媒体の資料を整理してましたら、「武蔵野のおもかげ ~自然と文学~」というチラシが出てきました。

 平成30年1月20日(土)~3月4日(日)にかけて、さいたま文学館の企画展示室で開催されていた展覧会のチラシです。


 一年間見なかった使わなかった資料はこれからも使いません、だから処分しましょう、といったことを物捨て記事やブログで見かけます。

 が、捨てなくてよかったです。

 今までの経験上、そうやって捨てたものに限って後になって必要になって、しかも替えが効かないという落涙状況に陥ってきたので、その経験からの直感でとっておいたのです。


 武蔵野の樹林の美しい写真、絵画、資料などで彩られたチラシを掲げて持って、しみじみと眺めてみました。


 あー、なんで行かなかったのかなー。


 当時は、さらっと目を通しただけで、文豪ものとのコラボもなさそうなので、わざわざ出かけて行こうとも思わず、そのまま仕舞い込んでしまっていたのです。


 その後、狭山丘陵の植物と触れ合う機会があり、武蔵野の風景の写真が載っている本を探して民俗学者宮本常一の著作に出合い、武蔵野への興味が深まっていったのです。



 武蔵野といえば、最初に思い浮かぶのは、国木田独歩の『武蔵野』という方が多いと思います。

 また、田園生活をおくろうと武蔵野粕谷に引越した徳富蘆花が、本名の徳富健次郎で発表した『みみずのたはこと』で語られている武蔵野百姓暮らしも知られていると思います。

 両者と同時期の作家田山花袋が記した『東京近郊 一日の行楽』は、武蔵野の行楽記録として面白いです。


 武蔵野の自然――植物や水辺の様子等々――が、具体的な名称と共に語られるので風景として思い浮かべやすく、なにより行楽には欠かせない「食」についてもちらほらと触れているので、茶屋で一服の気分にもなれます。


 中でも多摩川の鮎は、「魚田ぎょでん、三杯酢、塩焼、共に妙である」と紹介されています。魚田は、魚の田楽のことです。田楽に、酢のものにに、焼魚……、これは、一献、また一献と、はかどってしまいそうですね。


 文学館のチラシには、正岡子規も武蔵野に触れているとあったので、手元にある本に目を通してみました。


 「寒山落木」

  秋時候雑

   さゝやかなる秋草を一盆の中に集め

   植ゑて床の間に置きたるを

 

  武蔵野をいくつに分けて床の秋

 

 この句集「寒山落木」には、夏目漱石が登場します。

 いかめしい顔つきの文学士が来たよ、大晦日には高浜虚子も来たよ、漱石が結婚したよ、漱石が旅に出るよいいな~、等々。

 その詠みっぷりは、Twitterのようで面白いです。


 話がそれました。


 さて、休日のお昼は、武蔵野名物の麺類で。

 『江戸名所図会』に描かれた深大寺じんだいじ名物の蕎麦にしましょうか、それとも、お盆の頃にちなんで精霊馬の手綱のうどんにしましょうか。








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