白銀の乙女

明星晴魔

始まり

 銀髪の女は、狼男ワーウルフたちとの戦いを終え、血の臭いを漂う林の中で立ち尽くしていた。女の纏っていた美しい銀色の鎧と剣は血と血油で汚れ、輝きを失っていた。

「また、鍛冶師のおじさんに怒られるかな」

 女は自分の鎧と剣を見て呟いた。これまでも銀色の鎧と剣を血で染めて帰り、修理の際に何度も怒られていた。

「謝って許してもらうしかないか」

 女は自分の頬についたちを拭いながら考えていた。自分についている二つ名を。

『鮮血の女剣士ブラッディシエル

 この二つ名はいい意味ではなかった。毎回、血まみれなって帰ってくることからついた二つ名だ。

(仕方ないか。私はこんな戦い方しかできないから)

 女は自分の人生を捨てた結果、冒険者になった。

 女は妹のために人生を捧げたが、妹の誇りを踏みにじってしまった。

「私は何がしたいのだろうか? 自分に聞いても分からないか」

 女は剣を鞘に納めるとその場を後にした。

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白銀の乙女 明星晴魔 @alsharvin

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