ビスク

夕陽とクラシックが私を包み込んでいた。



テーブルの木目をなぞる。


こつんとティーカップに指が当たり

少しの珈琲を揺らした。



ぼんやり、ぼんやりと


書きかけの恋文を思い出した。




胸の奥を焦がす恋慕の情。



黒炭の様な美しい髪


ダイヤモンドを彷彿とさせる輝く瞳


陶器の肌


物静かな女。



桜と共に咲き、

木枯らしと共に吹き去っていった。



今頃誰かの腕の中だろう。



何処かでちりちりと紙の燃える音が聴こえた。




瞬く間に夕が闇へと変わる。


まるで記憶の様だった。




もうじき旋律が終わる。

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