海辺の逃避思考
其所は真っ暗な深海だった。
底は冷たい。
まるで冷蔵庫の様に
何もかもを冷やしていた。
例えばそう、
平たい石の上に転がる珊瑚の死骸。
それらを操る薄汚い蛸
彼等は一度入ってしまったこの場所から
一生出ることはないだろう。
例えばそう、
水中を泳ぐ魚達。
綺麗な尾びれを揺らす冷たい心
淀んだ彼女等の色は他の魚を飲み込む色だ。
僕は深海に通うヤドカリだった。
ヤドカリなんかじゃこんな所
住めやしないのに馬鹿らしい。
いつか過ごしたあの場所、
青い空が輝く白い砂浜へ
暖かい太陽が包む砂浜へ
彼処へ帰るとき
僕は深海の有難みを感じることができるだろう
……という呪文。
自分の重たい殻を呪いながら
僕はまた、あの冷たい深海へ向かう。
冷えゆく生命に気付きもしないまま。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます