アソート

瀬野砂月

霊感男子

 足を前に。ただそれだけ。

 今止まったら確実に死ぬ。

 夜の見知らぬ住宅街。幸か不幸か人はいない。

 逃げ切れるかどうかは運と自分の体力次第。


(ホントもう最悪だ! ここどこだよ!)


 右に行けばいいのか、左に行けばいいのか。神社や寺があればいいのだが、場所がわからない。スマホで検索しようにもそんなひまはない。少しでもスピードが落ちたら、捕まってしまう。

 肺が悲鳴を上げ、足が縺れて転びそうになる。

 元々、身体を動かすのは嫌いではない。むしろ体育は好きだったし、高校の頃はバスケ部に所属していて県大会で準優勝したこともある。でも、大学に入ってから運動らしい運動は一切していなかった。


(こんなことなら、毎日のジョギング続けとくんだった)


 親元を離れ、一人暮らしをするマンションに引っ越して、あっという間に新生活が始まった。見知らぬ土地、慣れない家事、新しい勉強に人間関係。忙しい日々に高校時代習慣となっていた毎朝のジョギングは、いつの間にか忘れ去られていた。それがこんなところでたたってくるとは思っていなかった。

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アソート 瀬野砂月 @tsukinouta_ss

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