第163話 廷々紫への質問タイム

 急遽始まった廷々ていでゆかりへの質問タイム。

 せっかくなので俺も同席することにした。


「では、風間さんからどうぞ」

「いいんですか?」

「はい」

「で、では……。廷々さんは魔法ではなく、術式で戦っているというのは本当なんですか?」

「はい。本当ですよ」

「すごい……。ですが、術式はあくまで魔法の補助ですよね? どんな魔法を使っているんですか?」

「それはよく訊かれるんですが、ベースの魔法については廷々家が秘匿しているため、お教えできないんです」

「そうですか……」


 以前、歩夢が言っていたことは本当のようだ。ということは、まさか人の道にもとるようなことをしているという噂も……。

 いや、噂は噂だろう。とにかく俺は紫を信じるって決めたんだ。


「ご期待に添えず申し訳ありません」

「いえ! 企業秘密ということであれば、致し方ありません」

「ですが、ヒントくらいなら大丈夫ですよ」

「えっ! いいんですか!?」

「はい。魔法名は言えませんが、皆さんがよく知ってるありふれた魔法ですよ」

「よく知ってる魔法……ですか」

「ええ。そこに廷々家のアレンジが加わった独自のものとなっています」


 少し、意外だった。てっきりオリジナルの魔法だと思ってたのに、既存のものだったとは。


「じゃあ次わたしー!」

「はい、どうぞ」

「廷々さんって彼氏いるんですかー?」

「彼氏……ですか?」


 乃愛らしい質問だな……。


「いませんよ……」

「じゃあ気になってる男の子はいますかー?」

「それは……」


 予想外の質問に窮しながら、紫はチラッとこちらを見る。助け舟を求められてもなぁ……。恋愛ど素人の俺にどうしろと。


「そういう乃愛さんは好きな子いないの?」


 え? 今の切り返し、俺が言ったのか?


「え? 私ー?」


 時々出る女の子らしい言動。姫嶋かえでに変身してる時の副作用のようなものだと思うが……。まあ今は助かったな。


「彼氏はいないけどー、気になる子ならいるよー?」


 ん? なんだその視線は? ニヤリと笑みを浮かべて真っ直ぐ俺を見つめるのはなんなんだ!?


「コホン。他に質問がなければ……」

「では、私から質問してもいいかしら?」

「北見校長?」

「……構いませんよ」

「うちに来てはいただけませんか?」

「うちに? まさか校長先生、紫を養子に!?」

「ふふ、違いますよ。三ツ矢女学院に来てもらえないかと思いまして」

「え!? 紫が三ツ矢女学院に!?」

「はい。前からお誘いは受けていたんです」

「そうなの!?」

「紫さんが……三ツ矢女学院に……!」


 憧れの紫が来るとなれば、水鳥も嬉しいだろうけど……。


「でも、ずっとフラれてるの」


 おほほ、と笑う。やっぱり食えない人だな北見校長。


「紫はどうして断ってるの?」

「我が家にはそんなお金ありませんので」


 そういや、俺は特例的にここにいるけど、三ツ矢女学院は日本で最高峰のお嬢様学校だ。入学金、年間の授業料、その他費用を合わせた中学・高校6年間の総額は1000万円近いとぷに助から聞いたことがある。


「お金のことなら心配ないですよ。卒業までの費用は全て私が出しますので」

「えっ!?」


 卒業までの費用全額かよ!? なんでそこまでして紫が欲しいんだ? 確かに魔法少女としての価値は高位ハイランク相当だが……。

 そういえば、俺に対しても理事長が高級マンションを用意してくれたんだよな。

 

 ぷに助が言うように、確かに10キロメートルエリア担当は貴重な戦力だ。だが、姫嶋かえでを含めればそのうち十分の一ほどが三ツ矢女学院に集まっている。ハッキリ言って異常だ。


「……」


 流石の紫も苦笑いしている。でも、紫にとってはかなり良い話のはずだが……。


「どうかしら?」

「……すみません、私の独断では決められませんので」

「ええ、いつでも。色よい返事をお待ちしてますよ」


 紫が三ツ矢女学院に来てくれるなら俺も助かるし、水鳥にとっても嬉しいだろうが、どうなるかな。



 To be continued→

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