第63話 深夜の近況報告

「はぁ……」


 スタジオからの帰りに魔物が10匹くらいいたから、魔法少女MポイントP稼いでから変身解除してアパートに戻った。


「どうすりゃいいんだよ……」


 ここに来てまさかの三ツ矢学院というステータスが裏目に出た。いくらなんでも超お嬢様学校に通う女の子がこんなボロアパートに住んでるとか怪しさ満点だろ。

 自分だけの力で生活したいから。といった美談的な設定にしようと思えばできるが、設定はなるべくしたくない。恐らくぷに助も同じ意見だろう。


「……ハロー、メイプル」


 なんだか最近メイプルを呼び出す機会が増えてる気がする。それだけ便利で頼れるってことなんだけどな。藍音に感謝だ。


『お呼びですか?』

「なあ、このあたりで安くて良いマンションとかないか?」

『すみません、物件情報については分かりません』

「まあ、そりゃそうだよな」


 素直にスマホで検索してみる。なるべく出社に影響が少ないマンションを探してみるが……。


「5万5千円……12万3千円……8万7千円……うーん、どれもやっぱり高いなぁ」

『引っ越しですか?』

「えーと、実は……」


 事情を話すと、メイプルも「それは困りましたね……」と悩む。高性能AIをも困らせる難題をどう解決したものか……。


『私たちだけでは難しいですから、スレイプニルに協力を要請しましょう』

「そうだなぁ……仕方ない」


 メイプルが連絡を取ってくれると、ぷに助はすぐにやって来てくれた。


「早かったな」

「まあな、今はちょうど手が空いてたからな。それにしてもメイプルはいいな、緊急コールしなくても密かに呼び出してくれるから助かる」

「それは俺も同感だな。さて、早速本題に入るんだが……」


 メイプルに話したことをそのまま伝える。それとついでにHuGFのメンバーが魔物に寄生されたかも知れないということ、奇妙な違和感と紫が分析してくれた結果も報告した。


「なんだか随分と情報量が多いな」

「すまんな、寄生については紫に確かめてもらってから報告しようと思ってたんだ」

「それは正しい判断だ、気にするな。詳しくはまた後日、廷々さんから直接聞くことにしよう。目下の問題としてはリモートレッスンの件だな?」

「ああ、そうなんだよ」

「お前にそんな歌唱力があったとはなぁ……信じられん」

「いや、それは俺も本当に信じられないんだよな。魔法少女になった影響かな?」

『今歌ってみては?』

「そうだな、歌え」

「いやいや、今何時だと思ってんだ。そして壁の厚さが何ミリだと思ってんだ」

「壁の厚さなど知るか。遮音結界を張ってやるから歌え」

「そんなことで使っていいのか……ったく、分かったよ」


 せっかくなので覚えたての、さっきスタジオでも披露した歌を口ずさむ。


「……どうだ?」

「いや、これは思ってた以上に……」

『素晴らしいですね、さすがはマスターです』

「マジ?」

「どうやら魔法少女は関係なく上手いようだな」

「やったー! 来週カラオケ行こうかな」

「アホめ、レッスンがあるだろうが!」

「いや、その前にちょこっとやるくらいならいいだろ」

「その前にの確保だろうが!」

「あ、そうだった」

「まったく……。しかし話を聞く限りでは引っ越す必要は特になさそうだが?」

「いや、そういうわけにも行かない」 

「なんでだ?」

「これから先、姫嶋かえでの家に行ってみたいと言われることがあると思う。その時にまさかアパートここに招くわけにはいかないだろう。かといってレッスン専用の生活感無しの殺風景な部屋は困るだろ? それに離れた拠点の管理を仕事の合間にやるなんて面倒くさい。だからいっそ引っ越そうかと思うんだ」

「お前な、家賃と給料のバランスを考えてるのか?」

「電気ガス水道だけ考えればなんとかなる。食料は本部のショップを利用すればタダ同然だしな」

「セコい奴め」

「倹約家と言ってくれ」

「まあ、上から補助金くらいは出るだろう」

「マジか!?」

「数万円程度はな」

「ものすごく助かるわ」

「さすがに審査はあるからな、後日候補をいくつか提出してもらう。候補をまとめたらメイプルを通して報告しろ、いいな?」

「ああ、分かった。よろしく頼む」


 まさかここに来て引っ越しすることになるとはな……。魔法少女といい、人生なにがあるか分からないものだ。

 正直家賃は厳しいが、補助金あるらしいしショップもあるし、なんとかなる……かな?


To be continued→

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