奴隷メイド・アリマールSide
私は貴族に使えるメイドでした。元々は下位爵の娘でしたが、土地もない下位爵の娘にいい縁談があるわけはありません。このため上位爵の家で募集していたメイド枠に応募し、運良くその仕事にありつけました。
私は上位爵の令嬢付きのメイドとなりました。まだ10歳と私より5歳年下のかわいらしい女の子で、私も精一杯務めさせていただきました。この家には他にも多くの子供がおり、私の使えた令嬢は三女でした。頑張って使えることで徐々に信頼をしていただけるようになりました。この方のために頑張ろうと思っていました。そう、あのときまでは・・・。
仕事を終えて部屋に戻ろうとしたところで何者かに襲われました。なぜこんな館の中で?一緒に働いている人なのかもしれないと必死に抵抗したところ、運良く足が相手の急所に当たって逃げ出すことができました。
なんとか部屋に逃げ込んだのですが、しばらくしたあと、メイド長から呼び出されました。どうしたのかと思って部屋に行くと、そこにはメイド長だけで無く、この家の次男の方が一緒に立っていました。
「こいつが僕に暴行を働いたんだ。ちょっと肩を触っただけだったのに急に暴れ出して・・・。」
頭の中が真っ白になりました。まさかあの強姦がこの家の次男様だったなんて・・・。
「どういうことですか?」
その目は諦めてくれと言わんばかりでした。
「すみませんでした。」
「それじゃあ、このあと部屋に・・・」
そう言いかけたところでここの奥様がやってきて怒り出しました。
「なんてことをしてくれたの!私の息子に何かあったらどうするつもりだったの!!」
そういって私はすぐに屋敷を追い出されることとなりました。しかも保証金と言うことで今まで貯めたお金も没収され、奴隷として売られてしまったのです。
わたしが何をしたというのでしょうか?一所懸命使えていただけなのに、なぜこんな目に遭わないといけないのでしょうか?
残念ながらせっかく仕えていたお嬢様とはあのあと会うことはかないませんでした。最後にメイド長から謝罪とお嬢様のことを聞きました。最後まで私のことをかばっていただいていたみたいです。
私は制約なしの奴隷として売られることとなってしまったため、このあとのことは考えたくありませんでした。
奴隷商人のところにやってきて、最初の数日は能力調査などになるのですが、なぜかすぐに買い手が見つかったみたいでした。買っていただいたのはクルト様という冒険者でした。冒険者と聞いてちょっと心配しましたが、実際に会ってみるとかなり優しそうな方でした。
すぐに準備をして家に連れて行かれました。そして最初に言われたのは今までと同じようにメイドとして働くこと、夜の相手は求めていないこと、好きな相手ができたら付き合ってかまわないことなどを聞かされました。
どういうことでしょう?
混乱しているとマルトさんとクレアさんいう同じ奴隷メイドの方がやってきて簡単に状況を説明していただけました。しかし、どういうことなのかすぐには理解できませんでした。
しばらくすると言われたことが真実であることがわかりました。正直奴隷なのに奴隷とは思えない生活でした。ある意味前よりもいい生活をしてます。
働き出してから2年ほどしたころに奴隷からは解放されましたが、そのまま働かせていただくことにしました。このあと何度か顔を合わせたことのあった商人の男性からプロポーズされました。ご主人様に説明をしてから付き合うようになりました。
そして結婚する話が出たときに奴隷購入の経緯を聞かせてくれました。どうやら前に仕えていたお嬢様が奴隷商人に少しでも条件のいい人になるようにとお願いされていたようです。そして奴隷商人から私のことを聞いたクルト様がすぐに動いてくれたようでした。私の実家にもその旨連絡していただいていたようです。
結婚式には私の両親もやってきました。どうやらご主人様が私の実家にも商売の投資を持ちかけていたようです。両親もかなり感謝されていました。今ではご主人様が行っている商売の一部を代わりにやっているらしく、うまく収入が得られるようになっているようです。
このおかげもあり、兄も姉もつつがなく結婚できたようです。クルト様は貴族との関係もできてこっちとしても助かってるよと言っていますが、私のことを考えて声をかけてくれたのは間違いありません。
このあとお世話になったお嬢様にも再会することができました。もちろん正式には会えませんでしたので、町で偶然を装い会うことになりましたが、今では幸せに暮らしていることを話すとかなり安心されたようです。
お嬢様も他の貴族に嫁ぐことになったようですが、相手の方もよい方だったみたいで幸せそうでした。今はご主人様の紹介とも関係があるようです。
結婚はしましたが、夫と話をして週の半分は今まで通りメイドとして働きに出ています。やはり恩返しがしたいことと、働いている方がやっぱり楽しいのです。
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