レイトマン・ショウ!
窓拭き係
レイトマンとストレイトマン
「どうも、レイトマンです」
「あんた女ですけどね。ストレイトマンです」
「やはりウーマンとストウーマンの方が良かったのでは?」
「ストはどっから来たんですかそれ」
「そこはほら、『スト』レイトマンだし」
「雑では?」
「ていうかストレイトマンってなんですか、『まっすぐな男』って、そりゃ人間誰でもまっすぐでしょうよ」
「いやそうとは限らないでしょう。わたしそういう人知ってますよ」
「ほう、そんな奇々怪々な見た目の人物がこの世に存在すると……あなたも大変ですね」
「そうですよね、自分のことって案外見えにくいですもんね」
「私? いや私まっすぐでしょう。背骨とか特に」
「骨の話はしてないんですね、これが。あと背骨も少しは曲がってるでしょうが、ヘルニアの原因のひとつだろうが」
「まあ私の背中の話は後にして戴くとして」
「突っ込みませんよ」
「背中に…………突っ込む……?」
「あ?」
「そうですか……………………そんな趣味がおありだったんですね……………………」
「あーはいはいそうですね、とりあえず右ストレートでいいですか?」
「ストレイトマンだけに? 右利きなのもそれらしくてぐっど、ですよ」
「あんたいつか本当に背中からばっさりいくぞ、この刀をぶち込むぞ」
「そうなったら私ゃもう冥府に
「この期に及んでそれ絡めてきます?」
「私、まっすぐですから」
「あんたのそれはただの悪戯心だろうが。なんですかその形を取り繕う気すらない純真アピールは」
「いやいや本当のことですよ。試してみましょうか」
「どうやって?」
「これから私はずっと反対の事を言います」
「わあ、今日はエイプリルフールだったんですね」
「その嘘がどれくらい面白いかで、私のまっすぐさがわかるってもんですよ」
「それ嘘ですよね」
「そうですが何か?」
「雑では?」
「まあ止めときましょう、こんな話。あなたぐらいしか得をしない」
「確かに、まるで時間の無駄ですね。その点だけには同意します」
「それよりも私の背中の話をしましょう。さっき『後にする』って私とあなたで約束しましたからね」
「さっきの同意撤回してもいいですか?」
「もう受理しちゃいましたねぇ。あなたからのお墨付きは貴重ですから、大事に保管してますよ」
「賞状じゃねえんだぞ」
「まあ自分のことって、なかなか見えないものですから」
「一般人のわたしをどう曲解したらそこまで行き着くんですか」
「ほら、私まっすぐですから」
「どこがだ。そのねじ曲がった根性を一から叩き直してやろうか」
「でも私、自分の宣言は貫いてますしー」
「……それも反対の事ですか?」
「さあ?」
「雑では?」
「まあでも自分がまっすぐかどうかなんて、どうでもいいことじゃないですか。私からしたらあなたなんて私よりもひねくれ曲がってるんですから」
「それはあんたが曲がってるからでしょうが。矯正し過ぎた自撮りみたいになってるだけですよ」
「なんで人って、現実を捻じ曲げてまで自分をよく見せたがるんでしょうかねえ。私なんてほら、取り繕う努力もしない」
「ひょっとしてマナーというものをご存知ない?」
「取り繕わないのと取り繕う気がないのとでは大きく違うと思いませんか?」
「何が違うと思うんですか?」
「……文字数とか?」
「雑では?」
「ていうかそろそろこんな話やめにしましょう、ほんとにほんとに。我々にはバカみたいな話がぴったりなんです」
「さりげなく巻き込まないでください。というか止めたい理由はそれじゃないだろ」
「お、大当たりです。自分のことは良く見えませんが、他人のことは案外見えるもんですね」
「どうでもいいですよ。ちなみに本音は?」
「飽きました」
「雑では?」
「……でもそうですね、この無駄な会話はもう止めときましょう」
「じゃあ最後にあなたから私に何か訊きたいこととかありますか? 嘘100%でお伝えしますよ」
「なんで生きてるんですか?」
「うわ、即答ですか。傷付いちゃうなあ」
「……冗談ですよ」
「鋭すぎません? さてはあなた冗談を滅多に言わないタイプですね」
「……次はあんたの番ですよ! 何か質問ありますか!」
「一番最初にしたので十分ですよ」
「ああ、あれですか。ストレイトマンがどうとか」
「んふふ、そうかも知れませんね〜」
「あー、ちなみにその『レイトマン』って名前にはどんな意味があるんです?」
「ああ、それは簡単ですよ。今これを書いているのが『
「雑では?」
「……というわけでお相手は!」
「何言ってんだあんた」
「ゲストの『何言ってんだあんた』さんと、レイトマンでした!」
「…………。もはや何も言うまい……」
レイトマン・ショウ! 窓拭き係 @NaiRi
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