寝盗るブス風谷明日花01
映画に出ている女優に、憧れを抱いていた風谷は、高校生になると演劇部に入った。演技の練習ばかりすると思っていたが、実際には走りこみや発声練習、筋トレなど地味な練習が主で、イメージとのギャップに困惑した。それでも、大好きな演劇に携われる事は嬉しく、早く卒業して東京に行って女優になる事が夢だった。
しかし、女優になる夢は、両親からすれば応援するわけにはいかず、大いに揉めるのだが、大学進学を条件に東京へと上京する事が許された。
東京に出て来ると、色々な芸能事務所へと履歴書を送り、本格的に女優を目指すが、書類審査で落ちてしまい、やっと拾ってくれたのは、小さな芸能事務所だった。それでも、確実に女優への道を進んでいる実感は、風谷を勇気づけるが、たまにもらえる仕事はエキストラか、深夜バラエティの水着要員で、本当に風谷が望む女優の仕事は来なかった。
ある日、低予算映画の死体役で呼ばれた時、プロデューサーに声かけられる。次回作のヒロインに風谷を推薦してくれると約束されるが、見返りに身体を差し出す事が条件だった。もちろん、風谷は断ろうと思っていたが、このチャンスを逃すともう二度と巡って来る事はないと思い、仕方なく身体を差し出した。
そのプロデューサーが、風谷の初体験の相手になった。
しかし、一向にプロデューサーから連絡はなく、風谷は騙された事に気づいたが、この業界ではよくある事だと、事務所も取り合ってはくれなかった。
当時、風谷には大学で出来た彼氏がいた。芸能界に絶望する風谷を、献身的に支えとなってくれていたのはその彼氏だったが、プロデューサーとの一件があり、セックスに対してトラウマを抱えた風谷は、それが原因で別れてしまった。
大学を卒業し、夢も失った風谷だったが、応援してくれている両親の事を思うと、実家に帰るわけにはいかなかった。一応は就職するが、特にやりたい仕事ではなく、長続きせずに職を転々とする生活を続ける。
そして、夜のお店で働いていた時、今の旦那と知り合った。一流企業で働く旦那は、経済的にも恵まれていて、結婚相手には申し分なかった。
つき合って一年が経つと、旦那からプロポーズをされ、断る理由のなかった風谷は結婚を決める。
結婚式は、友人をいっぱい呼んで盛大にあげた。両親も喜んでくれたので、親孝行が出来たと風谷も安心した。しかし、どれだけお祝いの言葉を言われても、素直に喜べない自分がいる事を知る。それは、本当にこの男と結婚して正解だったのか、風谷は疑問に持っていたからだった。
案の定、結婚生活は退屈の連続で、風谷の幸せはそこにはなかった。家事をしながら、旦那の帰りを待つだけの日々。華やかな生活ではなく、不満は募っていく。離婚をしたところで、何もない風谷には決断する勇気がなかった。
これが、私の求めていた幸せなのかと思うと、何か違うように感じている風谷だった。
何か、解決策はないかと探していると、近所の絵画教室のパンフレットを見つける。元々、そんなに絵の得意ではない風谷だったが、ずっと家にいても何も変わらないと思い、絵画教室へと通う。
しかしその絵画教室で、大学時代の元彼と再会する事になる。黒岩瑛士、彼が風谷の大学時代の彼氏だった。
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