おじ恋

こたろー

第1話 終わりと始まり

2020年8月、夏の日差しがまだ残るその日、俺は離婚をした。


「それじゃー後は宜しくな!。」


「うん。」


ただの紙切れに印鑑を押し俺は10年の結婚生活に幕を下ろした


「さぁーて。」


俺は鈍った体を大きく伸ばしながら


「いてててて〜。」


肩いてー!!四十肩なのをすっかり忘れていた


妻と息子は両親と住むことになり2LDKのマンションから2人の生活用品だけを運び出して行った


ベッド・冷蔵庫・テーブル・ソファー・テレビ・・・家具はすべて置いて行きやがった


「これを全部一人で運び出すのかぁー・・・しんど!!」


俺はマンションの解約の日に合わせて粗大ゴミを出す事にした


思ったよりも沢山の荷物が残り、マンションのゴミ捨て場前は大迷惑な状態に


「10年間ってスゲーな。」


全ての荷物を出し切り


「ふぅ〜っ。」っと滴る汗を俺は拭った


「いっぷくするかー。」


タバコを吸いながら少しだけ物思いにふける


妻とは付き合っていた期間も入れたら13年寄り添った事になる


40をとっくに過ぎていた俺は未練たらしく昔を思い出していた


後悔しても後悔仕切れない思い出ばかりが蘇る


今更感満載だが暫く思いに耽っていると、何もない部屋でいつの間にか眠り込んでしまった俺は変な夢を見た


「お前はこれから何がしたい?」


誰かは分からないが俺に問いかける声が聞こえた


「お前はもう自由だ。お前はこれから何がしたい?」


「何がしたいって聞かれても・・・。」


今は未練たらしく過去の恋愛を振り返っているだけの俺にとって特にやりたい事は浮かばなかった。


そんな俺の頭の中でも読んだのか、誰とも分からない声はこう続けた


「どうだ?過去に戻って恋愛をやり直してみないか?人生何か変わるかもしれないぞ。」


その問いかけに俺は頭の中で


「それが叶うならと、ふと1人の女性の名前が頭に浮かんだ。」


それは元妻ではなかった。他の人が聞いたら


「こいつ!最悪!」


と、思うだろう。


しかし声の主は


「よかろう。やり直してみるが良い。それもまた一興」


と続けた


どれくらいの時間眠っていただろうか。太陽はだいぶ高い位置に来ていた


寝ぼけながら最後の掃除をする為に起きた瞬間、見慣れた部屋にいる事に俺は気づいた


異様に蒸し暑く感じた





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