知人に違和感を感じた話。



 雨がしとしと降って外出ができない日は、子ども達は映画観賞。


私はスマホでひたすらネットサーフィンだったり、SNSをしたりしている。


 ひとむかし前はFacebookをちょこちょこ覗いていたのだが今はまったくである。それ絡みで時々思い出す、一時的にメッセージのやり取りをしていた、ある古い知人がいる。


 結婚する一年くらい前、結婚式の準備を進めていた日常のなかのある日、覚えの無い名前で友達申請が来たのである。


誰だ・・?と思いながら来ていたメッセージを確認する。


「10年くらい前に、バレエ教室が一緒だった木下だよ。覚えてる?。」


結婚して苗字が変わっていたので、すぐに分からなかったが旧姓を言われてぴんと来た。

ひさしぶり!という定番な挨拶とともに、私も結婚が決まり有頂天になっていたのだろうか。

一つ返事で友達登録をしてしまった。


 木下さんとは、週に一度の習い事で会うだけの関係だったものの一緒に駅まで帰ったり休日に遊んだりもした。当時は二人とも中学生で、これまで1人や2人しか友達がおらず人間関係が乏しかった私にとって、数すくない大切な、大切なお友達だった。


 私がSNSで今の夫と婚約中という事を公開していたので、その話でメッセージのやり取りは盛り上がり、そして仕事の話になった。


「仕事に理解ある旦那さんで羨ましいなぁ!。私なんてお金に苦労したくなくて公務員になったのに、旦那さんにダメって反対されて・・・。」


木下さんのこのメッセージをたしか寝そべりながら自宅で読んだのだが、なんとなく。


なんとなくだけど。


胸にもやがかかったような気持ちになった。


どうしてだか、どの部分でこんな気持ちになってしまったのか、自分でも分からなかった。


「お金に苦労したくなくて」の部分なのか。「公務員になったのに」の部分なのか。



 木下さんはただ、自分の事を話しているだけなのに、どうしてだか私は、なんとなくこの二つのワードが、まるで自分のコンプレックスに触られたような・・・ざわざわした気分になってしまった。


 ふとよく会っていた中学生の頃を思い出した。


木下さんと一時的に違うレッスンのクラスになった時だ。


私はストレッチのレッスンで、彼女はバレエのレッスンだった。


「ユキー。私バレエシューズ忘れた」


そうなん、としか返せず、確か私は髪を練習着を着て髪をまとめている最中だった。


「つま先立ちとかしないといけないねん。」


そりゃそうでしょうね。


「今履いてるやつ、かしてよ。」


ストレッチのレッスンでは一応みんなシューズを履くのだが絶対必要では無かったので、脱いでかしてあげたのだが・・・・。


「えっ?。木下さんに貸して自分ははだしでレッスン受けてるん?」


同じクラスの好きじゃない友人に言われて・・・。


 なんとなく、その時の気持ちを、このモヤモヤした気持ちで思い出してしまった。



 それでも、しばらくは彼女とやり取りを続けていた。


やがて時は流れて行った。


「寒い時期なんだけど、子どもの一か月健診も2週間健診もお宮参りもかぶるんだよね・・・。」


そんな事を話した。


「健診行かなかったら、虐待で疑われるよ?。」



なんとなく・・・・。私のなかで膨らんでいた何かが、落ちていくような・・・そんな感覚がした。





「いや、健診にはいくよ。行事がかぶるなぁっぼやいてただけだよ。」



どうして、私は彼女に必死で言い訳を並べているんだろう。


なんだか、彼女といると自分がとても小さい人間になった気がしていた。


 やがて、私は彼女をこっそりブロックしてしまった。


 申しわけない事をしたと思っている。


 でも、「合う」「合わない」でいったら、結局私の方が合わなかったのだと思う。彼女の人格に問題があった訳ではないと思う。きっと、私の問題だと今は思う。


 今彼女は何をしているのか。きっと元気にしているだろう。


 私の事はどう思っていたのか。


 恐ろしくて、それは考えたくもない。


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