男の人を、傷つけた話。
若かったあの日。
恋をして。
痛い目になんて逢っていない。と思っていた。
私は、楽しんでいただけだ。そう言い聞かせていた。
あの人と同じように遊んでただけ。
遊んでた人を、本気で、好きだっただけ。だから、勝手に傷ついただけ。
自己責任だから、私は傷ついてなんてない。
だから他人に。「痛い目にあった事あるから、あなた心配」なんて言われたくはなかった。
でも。彼と、産まれて初めてユニバーサルスタジオジャパンも行ったし。イケアとか行ったし。面白くないので有名な、サッカー映画も見に行ったし。面白くない気持ちも共感できたし。 根暗で可愛くもない私に、まるで世界で一番可愛いみたいに。抱きしめてくれたし。
これは錯覚かな。
私をつかまえるだけ捕まえて。最大に、私を傷つけていった。
でも、被害者だなんて、私は思って居ない。思わない。処女じゃあるまいし。
私だって、誰かに好かれて振った事はあるし。
魅力を感じない人は、どうやっても感じないだろうし。
恋愛とはそういうものだ。
・・・・とそこまで考えて。居酒屋のトイレに、現実に引き戻された。。
気持ち、前髪を整えて。脂が浮いてきたお化粧を直して。
服装は、男性を意識している感じは出したくないので、基本ズボン。またはレギンスのスタイルと決めていた。
軽く見られたくはない。私は安い女ではないのだ。
ボンヤリと飲み会の席に戻る。
男の人がでれでれな雰囲気で私に話かけてくる。
「誰が一番お気に入りなんですか?。」
「ユキちゃんですよ。」
「わぁ。ありがとう。」
こんな感じで。あの人は。
私の手を握った。
簡単に。あんな事して・・・。
初対面の男の人の手を握るのは生まれて初めてだった。大好きだった彼なら。たぶん、異性にそうすると思ったからだ。膝の上に手とか置いてみようとしたけど、それは辞めておいた。
だって、男の人は、簡単に、こんな事するんでしょう?
キャバ嬢だってするだろうし。
それ以上は触らせないけど。
あえて手のひらだけ。
そして、最大に可愛い笑顔を近くで見せてみる。
あの人にもそれをしたのに。
どうして、あの人は本気になってくれなかったのかな。
一緒にいる時間を作ったはずで、たくさん会話したのに。
むなしかった。
そして、手を触った男の人から何回か食事の誘いがあったけど。
「彼氏に止められてるんで~。」
と嘘をついて、さくっと連絡を絶った。
だって。あのひとだって。
さんざんキスして。手を握って。カンタンに抱きしめて。
さくっと断ち切ったじゃない。私の気持ちを。
だって、男の人は好きでしょ? そういうの。
人の心と身体に触れるだけふれて、さくっと去っていく。そういうの好きでしょう?。
そう思い、何事もなく過ごしていた。
その時の飲み会をしていた幹事の子に、私への抗議の電話が来たらしい
「君は彼氏いそうな雰囲気だったから良かったけどさ。あの子彼氏いるなら、最初に言っといて欲しいわ!。俺本気だったのにさぁ。」
私に抗議じゃなくて、その友達に抗議するなんて、私の印象を悪くさせる作戦なのだろうか。この男性もなかなか性格悪いじゃないか。さくっと断って良かったと心底思った。
もちろん、その女友達には心から詫びた。
最近、旦那にその話を愚痴ると。
「いや・・・。ものすごく可愛い子に手を握られて。にこにこされると。その気になるもんだと思うよ・・・。」(旦那の趣味は悪いので、私を美人だと思ってくれています)
手を握ったのは、その人だけではないし、女友達皆にもしていたし、外だったので手袋をはめていたのだが・・・・。もう何も言えなかった。
今思うと。
私。
その人を、好きだった彼と重ねて。夢中にさせて、振ってみたかったのかもしれない。
それは、それで。
申しわけなかったかなぁ・・・。その人悪くなかったのに。
と、今なら思う。
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