3三桂戦法殿と私
以前、「左美濃さんと私」という記事を書きました。私の囲いに対する愛のお話です。
左美濃は今でも愛用としていますが、四間飛車が減った、左銀をなかなか上がらない人が増えた、などの理由で指す機会はめっきり減っています。
では、相居飛車ではどうか。囲いではなく、ずっと愛用している戦法があります。横歩取り3三桂戦法殿です。
プロの将棋ではめったに見ません。電王戦でやねうら王が指しているので知った、という人も多いかもしれません。
3三桂殿(略させてもらいます)は、指しこなすのが難しい戦法です。すぐに仕掛けられる筋もあれば、じっと構えられて一歩損を主張されることもあります。最近は対3三角の青野流風味に、右の桂馬をすぐに跳ねてくる人も増えました。プロが指さないということは、参考資料が少ないので自分で対策を考えなければなりません。
それでも気が付けば20年、私は3三桂殿を指し続けているのです。
きっかけは、佐藤康光先生の将棋を観たことでした。当時の康光先生は、緻密流と呼ばれるほどの本格的な将棋を指していました。本当ですよ。嘘じゃないですよ。そして康光先生の指す3三桂戦法が、とても美しく、そして力強く見えたのです。
桂馬を跳ねて角道を止めるのは、一見違和感があります。しかし一たび桂馬が跳躍すれば、角の花道もぱっと開け、華麗に相手陣を攻略できることがあります。
三浦先生や谷川先生の棋譜も参考になりました。3三桂殿は、職人がたまに引き出しから出す、とっておきの宝物のような戦法だと思いました。
3三桂殿はなかなか気難しいです。ひねり飛車風味になることが多いのですが、美濃囲いにすると隙が多くなってしまいます。横歩取りということで、お互いに持ち歩が多く、技もかかりやすいです。
前述したように、持久戦になると歩損が響きます。相振り飛車のようにして、ほぼ同じ陣形で歩得を主張されることもあります。
負けるときは大差で負けてしまいます。なかなか勝率もよくなりません。それでも私は、3三桂殿とどこまでも付き合っていくつもりです。プロが指さない戦法だからこそ、誰かが指し継いでいかなければ、と思うのです。
3三角戦法や相横歩取りを試したこともありました。でも、何か、何かが違うのです。3三桂殿は、後手番を受け入れて一手の得を桂跳ねにかけています。私はその姿勢に惚れているのかもしれません。
そして、私に3三桂殿の魅力を知らせた康光先生は、その後自由奔放な序盤作戦を操るようになりました。もう、真似をできるという位相ではありません。もし今の康光先生が3三桂戦法を指したら、新たな地平が拓けるかも、とも思います。もう一度、3三桂殿の魅力を発信して、新しい3三桂使いを増やしてみませんか、康光先生?
初出 note https://note.com/rakuha/n/n93f9d4f335a0
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