女神さま、アカピッピミシミシガメをください

@dekai3

第1話

 薄暗い納屋のコンクリートの床に、チョークで書かれた歪な魔法陣。

 中央には給食で使うナフキンが敷かれ、その上にはメザシと蓋を開けたばかりの牛乳瓶が置かれている。


「よや、とくきたれ。きたらざれば、この……うーん、よめない…の、ちから…めたるにて、しめん」


 納屋の入り口には程よく日焼けをした少年が立っていて、何らかの皮で作られたハードカバーの本を必死になって読んでいる。

 私はその様子を魔法陣の中から見ており、このきゃわゆいタンクトップ半ズボンの少年のたどたどしい召喚の儀式が終わるのを待っている。


「あぎお、てらぐるむ、ばゆへおん、すていみ、うまとん、ゆえしゅておん」


 分かる分かる。そこ発音難しいよねー。でも魔法陣を書いた時点で八割成功してるんだからはしょっちゃってもいいんだよ? 線ガッタガタだけどなんとか書けてるし、ちゃんと捧げものもあるし。


「たたーるのいえの、まつり…? によりて、だいきゅうの……?」


 あー、もういいから。もう適当でいいから。そんな困った顔されたらお姉さんも困っちゃう。ほら、早く最後のだけ言っちゃって。


「しょうかんす!」


 よっしゃ、ショタの契約者ゲットォ!


ビカー! ビカビカビカー!!


「うわっ、まぶしっ?」


 少年が呼び声を言い終わると同時に魔法陣をそれっぽく光らせ、吸っても大丈夫な見た目だけの煙をまき散らし、さも今現れたの様な細工をして透明化を解除する。


「命に応じて馳せ参じました召喚者よ、汝の望みを叶えましょう」


 そして少年の眼前に跪き、男の子なら誰もが大好きな豊満なおっぱいの谷間をチラつかせながら上目遣いで見上げる。

 この私を召喚したという事はそういう事なのだろうし、こんな若いのにイケナイ事に興味津々だなんてなんて行幸。最近はおっさんやジジイの相手ばっかしていたから久しぶりに美味しい物が吸えそうね。最近と言っても数百年はまえだけど。


「うわー、ほんとに出たー!」


 召喚が成功したことに驚き、きゃわゆい顔からばちりんこと星を飛ばす少年。

 今は私が出てきたけど、願いを叶えたら次は少年が出す番だからね? いっぱい出してもらうからね???


「はい、契約の完了の為に願いをお願いします召喚者よ」


 私は呼び出されただけではこの魔法陣から出れないし力の行使も出来ないので、魔法陣の外であれやこれやをするのは召喚者との契約が必要だ。

 契約とは『願いを叶える代わりに精(※重要)を貰う』という簡単な物である。

 願いを叶え終わるまでは召喚者に付き従わなくてはならないが、叶え終えた後は魔力が尽きるまで自由に活動が出来る。あんまり派手な事すると悪魔討伐師が来ちゃうけど、悪魔を召喚しちゃうような男の子をしゃぶり尽くすぐらいなら許されるよね。

 これぐらいの男の子の願いって言ったら簡単な物かえっちな物が多いんだし、ぶっちゃけボーナスタイムで棒を成すお時間な訳よ。男の子の棒を!成す!お時間!!


「うん、えっとねー」


 少年はそう言いながら半ズボンのポケットからスマートフォンを取り出して画面をこちらに魅せ付ける。物理ボタン無しとか何気に結構新し目のスマホじゃない。田舎の男の子って思っていたけど、実はそうでもない?でも最近はこういうののお陰で若くてもえっちな事に興味津々な子って増えてるらしいからいっか。


「女神さま、アカピッピミシミシガメをください」

「アカピッピミシミシガメですね、それは……え、女神?」


パワワワ


 聞きなれない単語が出てきたので、思わず願いの詳細を聞く前に契約が完了してしまった。

 この少年、かなりの勘違いしている様だ。

 私は女神なんかではない。

 え、女神かどうかなんて服装見たら分かるよね?こんなエナメル質のテカテカの黒いぴっちりレオタード着た女神なんて居る?いや、居るかもしれないけど普通はもっと、こう、白いローブとかじゃない?それに女神なら草冠付けてるイメージじゃん?私めっちゃ角あるじゃんね、角。それに女神を召喚するならこんな怪しい儀式なんかじゃないでしょ多分。あー、これめっちゃ面倒な事になるタイプじゃん。経験で分かるわー。好みのショタだからって油断したわぁ…


 私、女神じゃなくてサキュバスなんだけどなぁ…

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