ひとめぼれ

井の中の蛙


息を飲んだ。


その姿は、光をめいっぱい受けた向日葵よりも、地中の奥底で形成される宝石よりも、煌びやかで美しかった。


その時、私は今まで体感した事の無いような高揚感を覚えた。


「もし…そこの御方…」


私はつい、その美しい美しい女性に声をかけた。


彼女は私の声を聞くと、目をこちらにやった。が、何も言わなかった。

無口な女性であった。


先程は美しいが故にまじまじと、見ることの出来なかった彼女の姿を、目に焼き付けるように眺めた。


彼女の腕は細く白々しく、まるで人形の様だった。脚も同様である。


口元は紅を引いていたが、失敗したのか頬を伝うようになっていた。


瞳は暗い。が、力強さがあった。


やはり、やはり美しい女だ。俗に言う、一目惚れというやつであろうか。


私はとうとう我慢が出来なくなって、彼女を抱きしめた。


彼女の体はとても細く、皮と骨で作られたような体だった。


だが、どこか安心感があり、とても心が落ち着くのだ。


そして




私は





彼女の腹に刺さっていた短刀を引き抜くと、彼女の首に手を伸ばした。










私の熱は未だ治まることを知らなかった。

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ひとめぼれ 井の中の蛙 @miyatuka

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