第44話 お酒の仕入れ!

「美里さん、お酒ってどこの国が一番作ってるの?」

「勇気君? それはドーガさん達に持って行くお酒が基準だよね?」


「うん。俺は飲まないからね」

「じゃぁ、蒸留酒が一番いいよね。それだと生産量の圧倒的一位は日本だよ?」


「え? そうなの? 知らなかったな」

「焼酎がメインだけど、ウイスキーやブランデーも結構作られてるしね」


 現在ではネットの閲覧が出来ないから、何処にお酒の製造工場があるのかは、現地に行って人づてに聞くしか無いかな?


 そう思っていたら「勇気君。本屋さんか図書館に行けば、お酒の製造工場が乗ってる本なんかはあるんじゃないの?」と香奈さんが言った。

「香奈さん。凄いね」って褒めるとちょっとどや顔だった。


 俺達は図書館を目指す事にした。

 防府ではちょっと嫌だと思ったので、博多の街に行くことにした。


 博多の街で図書館を見つけて入館すると、結構な人数が居てびっくりした。

 少し状況を聞こうと思って里香と一緒に、高校生っぽい子に声を掛けた。


 今現在博多の街で生き延びている人たちは、99%の人が既に胞子人になってるんだって。

 

 お金があったとしても、今は物を持ってる方が圧倒的に有利だと解っているので、商店には商品がが全然並んでいないそうだ。


 特に食べ物関係に関しては、お金ではほぼ買う事が出来ずに、市役所や区役所で配給を受ける物だけになっているんだって。

 これもいつまで配給が続けられるのかは凄い微妙だけどね。

 博多ダンジョンの2層で狩を出来れば、生鮮野菜や米は手に入るけど、キノコ系の人達に、2層より下で狩りをするの難易度が高いと思う。


福岡県や佐賀県、大分県の北部九州でも酒造メーカーが結構多い事が解ったので、みんなで集まって作戦を立てた。


 今は、どこでも同じだろうけど、やはり食料が一番価値があるから、お米を大量に手に入れて、それを被害の少ない北部九州の酒蔵で、お酒類と交換して貰うのが一番いいと言う結果になって、博多ダンジョンに3日くらい籠る事にした。


 ギャリオンの戦闘訓練にもなるし、まぁいいかな?


 食料の調達を始めて三日目の夜に、美里さんが話し掛けて来た。

「勇気君? 防府での事は気にしてる?」

「気にしてないと言えば嘘になります。でも俺は後悔はしていません。なんで人って、差別をしたがるんですかね?」


「凄く難しい問題だけど、この博多の街の様に99%の人が変異してたりすると、逆に残った1%の変異をしていない人は今凄くつらい立場にいると思うんだよね。その人達を勇気君ならどうしたいと思う?」

「…… 解りません。仮にその人たちを助けたとして、防府の人達の様に変異した人を化け物呼ばわりしない、保証はないですし俺は俺の親しい人や大事な人は守る。という行動基準でしか動けないです」


「そうね。聞いて置いて言うのも変だけど、私だって何が正しいのかなんて解らない。防府の時だって私も凄い悔しかったけど、自分の判断では何もできなかったと思う。仮にね、勇気君があの時結界装置を回収しなかったとして、私達は自衛隊としてもあの人たちの為に結界発生装置に必要な魔石を提供するまでのお人よしでは無かったわ。だから、ちょっと早いか遅いかの違いでしか無かったの。きっと早かった方があの人たちが生きて行く為に本当に必要な事は何だったのか気付ける、チャンスを上げる事が出来たんだと思うわよ」

「ありがとう美里さん」


「難しい事は私や、東指令みたいな大人に任せて、勇気君は自分が正しいと思う事をしたらいいよ。迷ったときは聞いてね。出来るだけ勇気君や里香ちゃん達にとって、一番いいと思える方法で考えるから」


「「あああああああ、美里さんが大人ぶって、勇気君を落とそうとしてるううううぅぅう」」

「ちょっ奈沙ちゃん沙愛ちゃん。決してそんな不純な動機じゃ無いんだからね! 大人の女としてのアドバイスなんですから!」


「えー…… 経験も無いくせにー」

「ちょっと失礼ね! 私は大人の女だから経験は豊富なんだからね!」


「里香! 美里さんあんな事言ってるけどどう思いますか?」

「それはもう結果出てるからいいよ。そっとして置いてあげて」


「里香まで……」


「みんなありがとう! お陰で何だかすっきりしたよ。取り敢えず明日からは北部九州の酒蔵を回って、食料とお酒を交換して貰いながら、ドーガさんの所で結界装置に交換しておきたいと思うから、忙しいよ!」


「「「「はーい」」」」


「美里さん。そう言えば、防府基地の女性隊員の人達の事も、あの件で飛び出してきちゃったから、結界装置とお酒の交換が終わったら、ちゃんとしておきたいですね」

「うん。そうだねお願いするよ」


 ちょっともやもやしていた感情は、美里さん達のお陰で随分すっきりしたとと思う。

 翌日は朝から、酒蔵回りをして随分たくさんのお酒を手にする事に成功した。

 やっぱり、生鮮食品が現物で手に入る事実は今のこの状況ではとんでもないアドバンテージだね。


 酒蔵の人達は、お酒を造るために必要な穀物を持って来て貰えれば、またお酒は仕込んでおいてくれると言う事だったので、それも近いうちに納品する約束をしておいた。


 この北部九州では麦焼酎を生産するところが多くて、その素材として大麦を使うらしいんだけど、大麦って普段見る事が無いからイメージするのが大変だな……


 大量のお酒を入手すると、次に向かう先は当然ドーガさんの所だ。

 ドーガさんに、大量のお酒を渡して結界装置を10個ほど手に入れる事に成功した。

 でも、他のドワーフ集落を見つけた時の為に、今回交換したお酒は半分くらいだよ?


 取り敢えずの目的は果たせたので、愛美の転移で防府基地へと一次帰還を行ったんだけど、そこで俺達は、意外な光景を見る事になった。

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