第17話 松江③

 俺達はうさ耳お姉さんも引き連れ、松江ダンジョンに潜る事にした。


 一層では、キラーラビットとクレイジーホースが中心で里香とミコと俺の3人で問題無く倒していく。

 この階層には隠し部屋は無かった。


 2層に降りて、ダンジョンを鑑定すると、隠し部屋も見つける事が出来た。

 俺はフェンリル状態なので、里香がレバーを回し隠し部屋の扉を開く。


 そこには、カンガルーが居た。

 カンガルーは青いボクシンググローブの様な物を嵌めて、俺達の姿を見るとシャドーを始めた。


 こいつやる気満々だな。

 腹のポケット状の袋には小型のカンガルーも居て同じように袋の中でシャドーをしている。


「ミコ、このカンガルーってお前と似たような存在なのか?」

「うむ、じゃがこいつは、格が足らぬと言うか闘争本能しか無いのじゃ、仲間には向かぬ」


「そういえばさ、魔素をため込んだらアカシックレコードに干渉して、項目が増やせるような事言ってたじゃん?」

「うむ、その通りじゃ」


「それって、そもそも俺って結構強いと思うんだけど、どうやって干渉するんだ?」

「あ、ああ、それはじゃな……」


「何で口ごもる」

「知識スキルを手にする事で、アカシックレコードに干渉出来るようになるのじゃ」


「知識スキルって、ミコが持ってるやつだよな」

「そうじゃ、このスキルは宝箱の守護モンスターか一部のダンジョンマスターしか所持していない」


「って事はミコを倒してたら手に入ってたって事か?」

「うむ、そうなるのじゃ……」


「今からでもOK?」

「うわ、駄目じゃ辞めるのじゃ、そのカンガルーも持っておるのじゃ」


「え? そうなの」

「ああ、ランクはⅠじゃが……」


「ミコだとランクⅤだよな?」

「わらわも最初に出会った状態ではⅠじゃった」


「どうやったらランク上がるんだ?」

「同じスキルを所持している敵を倒し続けるか、わらわの様に格を上げさせれば育つ」


「そうか、俺が身に付けて俺の格が上がればそれでもいいのか?」

「既に勇気は☆7じゃから、そこから勇気の格が上がるのは無理がある。可能性としては、所持モンスターを倒してスキルを重ねて成長させる手段が有効なのじゃ」


 そんな会話をしてると、カンガルー親子が殴りかかって来たので、カウンターでパンチを放つと、あっけなく光になって俺に吸い込まれた。


「ああ、なんか可哀そうな気がする……」

 だが、子供カンガルーに見えたのは親カンガルーと一緒に消えた。

 もしかすると同情を誘う罠ギミックだったか?


 トランスフォームも出来るがきっと使う機会は無い様な気がするな。


パンチングカンガルー☆☆☆


 ジャンプ

 ジャブ

 ストレート

 知識Ⅰ


 役に立ちそうなのは知識だけだな……


「あの、勇気君宝箱は開けてもいいかな?」

「忘れてたな。ミコ看破してくれ」


「解ったのじゃ。この宝箱は罠も無いし、スキルオーブが入っておる」

「よし、里香開けてくれ」


「これ何のスキルなんだろ?」

「鑑定してみるな」


 念話……思い描いた人物と意思疎通が出来る。

 スキル所持者からアクセスすれば、自分の意思でアクセス解除するまで相互通話可能。


 お、結構凄いな。

「これ、俺が使って良いか? もう電話も使えないし、これがあればかなり有利な立ち回りが出来るからな」

「うん勇気が覚えるのが一番いいと思う」


 そこまでの状況を、うさ耳先輩達は横から口を挟まずにずっと見ていた。


「先輩達は此処で待っててもらえますか? もう今は此処が一番安全な場所になったので。恐らく3日もあれば終わると思いますけど、一応食料とか飲み物は一週間分置いておきますね。服も制服破れちゃってる人が多いから、新しいの出しますから着替えて下さい」


 そう言って、着替え分も含めて40着程の服と下着を出して、生活用品もある程度出した。

「勇気君、これだけ女性がいると、生理用品とかも必要だから出してね」

「あー、俺その辺り解んないから、何が必要か書き出してくれよ。大抵の在庫はあるから」


 トイレの問題とかもあったが、それは蓋つきのごみ箱と、ペットシートで我慢して貰う事にした。

 女の子だけだし大丈夫だよね?


「あの…… 勇気君?」

「愛美さんどうしましたか?」


「何から何までありがとう、でもこの先を考えると私も里香ちゃんみたいに強くなって、少なくともここに居るメンバーは守れるようになりたいから、連れて行ってもらえないかな?」

「うーん、進化に必要な討伐数が頭割になるから一人だけって言うならいいですけど」


 愛美さんが、他の人達を見て「私がみんなを守れるようになってくるから、待っててくれるかな?」と、問いかけると、他のうさ耳先輩達は黙ってうなづいていた。

「じゃぁ、そろそろ行きましょうか? 俺が居ると先輩達着替えもしにくいだろうし」

「でも、狼の姿だからいやらしさ感じないし、別に平気だよねみんな?」


「「「そうだね!」」」ってまさかのノリで、みんな着替え始めた。

「ねぇ勇気君、さっき言ってた網タイツって持ってるの?」


「ありますけど、本当に着るんですか?」

「中々経験できないし、こうなったらこの状況を開き直って楽しむくらいじゃ無いと、やっていけないよ」


 愛美先輩がそう言ったので、コスプレ衣装が豊富にそろったディスカウントショップに行った時の戦利品で抱えていた、バニーセットを出してあげると、大喜びで着替えてた。


 自前のバニーテイルが有るので、コスチュームのウサギ尻尾を取り外すと丁度良く尻尾用の穴が開いたのでバッチリだった。


 やべぇ目が釘付けになるな。

 健全な男子高校生には目に毒過ぎる。


 みんなの着替えが終って、俺は里香と愛美さんを連れて隠し部屋から出発した。

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